その他の謎の解明
《他に気になることはあるか?》
福助が水を向けた。
「近藤さんはなぜ右の控室に入ったのか。いくら考えてもそれがわからない」
俺は言った。
《平木。もうゲームは終わった。特別に種明かししてやる。近藤誠一は素人の一般人だ》
そうだったのか。
「近藤さん、散々疑って申し訳ありませんでした」
俺は謝罪した。
「いえ、解答者の立場であれば仕方のないことです」
近藤はそう言ったが、やや不満が残っている面持ちだった。
近藤がシェイプシフターではないとすると、右の控室へ入ったのは、本当に、単に運営にそう指示されたからという理由で間違いない。
ということは……。
俺はしばし腕組みをして宙を見つめた。
《どうだ? 見当はついたか?》
「まあ、憶測でよければ」
俺は答えた。
《言ってみろ》
「ところで福助。富豪達はまだそこにいるのか?」
《いや、観客の方々はもう全員帰られた。彼らは忙しいんだ》
「そうか。俺は近藤さんの謎ムーブは、童貞を見つけられるか阻止するかという攻防とは全く別のベクトルの力が働いたために生じた現象だと考える」
《ほう。全く別のベクトルとは?》
「近藤さんが素人の一般人であれば、純君と同様の理由で、控室で行われるセックスを見せるわけにはいかないから、童貞の黒咲さんとは反対の右の控室へ入れる必要がある。しかしそれならば、席の並びを決めるとき、近藤さんとシェイプシフターの今市さんの配置を逆にしておけば、近藤さんに不自然な動きをさせなくて済む。そういう配置をしなかった理由はおそらく、デスゲーム制作運営スタッフの都合だけでこのゲームの企画のすべてをコントロールできる権限がないからだと考えられる。つまり、高額の料金を払って観覧する富豪、言い換えるとクライアントは、運営スタッフの上にいる存在だということだ。ここで注目すべきは福助の、大富豪『達』という発言だ。富豪は一人ではない」
《そうだ》
「観客の富豪が複数名いるということは、このデスゲームに求めるエンターテイメント性において何を重視するか、各人の嗜好が異なる可能性が高い。他業種を例に出そう。ある自動車メーカーがコンパクトカーを設計するとき、様々な顧客の要望に応えなければならないとする。価格、デザイン、燃費性能、安全性。それぞれの顧客の重視するポイントは違う。価格を下げようとすると機能は下がるし、機能を上げようとするとデザイン性は損なわれる。だから自動車メーカーは、そこそこの価格、そこそこのデザインで車を作る。結果、ちぐはぐな製品ができてしまうということはよくある。そういうベクトルの力がこのデスゲームにも働いた可能性はある」
俺は話しながら考えた。
《ほう。具体的には?》
福助が尋ねた。




