平木の推理⑪
《ですが?》
「今市さんがシェイプシフターで黒咲さんが童貞とは、一概に言いきれないのです」
《本当に回りくどいやつだな。だんだんイライラしてきたぜ》
福助が言った。
「なぜなら、童貞は卓越した演技力を持つプロの役者ですから、童貞とシェイプシフターを兼任することも、物理的には可能だからです。もし今市さんが童貞兼シェイプシフターだとしたら、黒咲さんの純粋シェイプシフターとしての仕事は、控室でセックスが行われたことをただ内緒にするだけですが、それでも立派な任務の一つです。ですから、今市さんが童貞兼シェイプシフターの大仕事をした可能性がある以上、理論的に絞れるのはここまでです。二人のどちらが童貞だったのか、判断できないのです。ここで推理が止まってしまうのです。推理が止まってしまう理由は、このデスゲームが、童貞は誰かという謎を解かせるゲームではないからです。童貞が、ゲーム中断の十分間で初体験を終わらせられるかどうかを見て楽しむゲームだからです。解答者にはロジックで正解を導き出すために十分な情報材料が最初から提示されていないんです。このデスゲームは論理パズルではなく『心理感覚パズル』なんです。公務員試験やSPI試験によくある、『この中に一人だけ嘘つきがいます。さて誰でしょう?』といった類の問題とは全く違うのです」
《……》
「それでもどうしても選べと言われたらどうするか? もしも頭に銃を突きつけられ、二人の内どちらかを童貞として指名しなければ撃つぞと脅されたら、自分はどう答えるか?ロジックが通用しないのであれば、感覚に頼るしかありません。直感的に俺の頭の中に浮かんでくるのは、やっぱりあの日のことでした。いや、浮かんでくるというより、どんなにふり払おうとしてもまとわりついてくる。そう表現するのが適切でしょうか」
《あの日のこと?》




