平木の推理⑨
《お前は何を言っているんだ?》
福助はそう言ったが、俺は無視して続ける。
「他のアイデアとしては、控室は体育館くらい広い部屋で、純君と童貞が離れた場所にいるようにし、間に衝立でも置いてセックスに気づかせないようにすることも考えられますが、それはあり得ません。なぜなら福助は、控室はゲーム室より狭いと言っているので、1㎠でもいいからとにかく狭くなければなりません。だからどんなに広くても、控室はゲーム室と同程度です。ともかく、純君と同じ控室にいたからといって、童貞ではないとは完全には言い切れないのです」
中断中右の控室にいた近藤と半田は、不服そうに首をかしげ、俺の話を聞いていた。
「ただしこれはあくまでも、福助の控室に関する発言を曲解したらそういうこともあり得る、という可能性にすぎません。俺が推理の過程で考えたことを、順序立てて皆さんに伝えたかっただけです。福助の控室に関する発言を、数学的観点ではなく日常会話として素直に受け取ると、多少凹凸があってもこのゲーム室の形は四角形です。同様に控室も四角形と推測されます。俺は左右の控室を見ていないので断言はできませんが、たぶんそうです。それに加えて純君の、控室で特に変わったことはなかったという発言も、素直に受け取ることにします。控室は細長いコの字型や回廊型ではなく、普通の四角形だった。近藤さんや半田さんが長時間部屋の奥に姿を消すこともなかった。そう受け取って良いでしょう。そういうことがあったら純君は、『特に変わったことは無かった』、とは言わないでしょうから。俺は純君の言葉を信じることにします」
俺は言った。
「控室は死角の無い四角形の部屋である。右の控室には素人の一般人である純君がいた。この二点から導き出せるのは、中断中、右の控室でセックスは行われなかったということです。別のアイデアとしては、四角くて狭い控室であっても衝立を設け、純君の目を隠しセックスするという強引なやり方も思いつきましたが、さすがにそれは無理があるのでお蔵入りにしました。衝立の裏からベッドのきしむ音や、あはんとかうふんという声が聞こえたら、純君を疑心暗鬼にさせるだけですから。遠回りしましたが、要するに中断中右の控室に入った対象者の中に童貞はいないということを言いたいのです。ただし、半田さんと近藤さんがシェイプシフターか一般人の素人かという点は一旦保留とさせていただきます。つまり童貞は――」
俺は二人の男に的を絞り、交互に視線合わせた。
「中断中に左の控室へ入った、黒咲さんと今市さんのどちらかです!」
黒咲は足を組んだまま、キザな態度を崩さなかった。
今市も微動だにせず、下を向いている。それがどういう意志を表しているのか、測りかねた。
俺は論述に戻ることにした。




