平木の推理⑧ 図2
俺は説明を続けた。
図2 控室の想像図
「控室はゲーム室と同じ四角形、という言葉は、ゲーム室と控室は両方とも四角形である、ということを指します。でもよく見てください。このゲーム室は四角形ではなく、凹の字型をしています(図1)。つまり福助は、凹の字型の部屋のことを『四角い部屋』と、嘘をついたことになるのです。いや、それ以前に『四角形の部屋』とは一体何でしょうか。底面が四角形の部屋のことでしょうか。その場合、ピラミッドのような四角錐の部屋のことを四角い部屋と呼ぶのは、ありなのでしょうか。だったら、六面が四角形で構成された、直方体や立方体の部屋のことを四角い部屋と呼ぶのは正しいでしょうか。いや、それですら数学的には正しくないです。なぜなら直方体というのは、すべての面が平面の四角形で構成されていることが条件ですから、窓枠、コンセント、梁や柱等、いかなる微細な突起があってもいけないのです。つまり、数学的に直方体の部屋というのは、世界中どこを探しても見つからないのです。数学的な直方体の部屋とは、概念上だけに存在する幻の部屋なのです。映画『キューブ』に出てくる部屋も、数学的にはキューブ形ではないのです。まあそれはともかく、ここで重要なのは、福助が、凹の字型のゲーム室のことを、四角形、と言った事実です。つまりその発言で、このゲーム内では凹の字型を四角形と呼ぶことが許される、という線引きがなされたことを示します。それが許されるのなら、当然凹の字型を横倒しにても、それを四角形と呼ぶことができます。さらに飛躍させると、細長いコの字型の部屋も四角形と呼べます。凹の字のへこみの部分の大きさや形について、福助は何も言っていませんから(図2)。さらに別のアイデアとしては、回廊型の部屋も、四角形と呼ぶことができるでしょう。もし控室がそういう変則的四角形だった場合、どうでしょうか? 純君がゲーム室へ通じる扉付近にいて、童貞が奥の方にいた場合、同じ控室にいながら純君がセックスに気づかなかったということも、全くあり得ない話ではないのです。その際、シェイプシフターが純君と会話をするなどして時間を稼ぎ、ゲーム室へ続く扉付近に足止めしていたことも考えらえます。純君は『控室で特に変わったことはなかった』と言っていましたが、一分たりとも半田さんと近藤さんから目を離さなかったとは言っていません。控室が変則的四角形でなかったとも言っていません。それについては、俺の質問の仕方が悪かった面もありますが」




