平木の推理⑦
「だとしたら私が入った控室に童貞はいませんよ」
近藤が言った。
中断中近藤と同じ右の控室にいた半田も頷いた。
「それを言うならこっちだっていませんよ」
黒咲が応戦する。
同じく今市が頷いた。
頷くということは、今市は黒咲に同意していることになる。ということは、左の控室に童貞はいなかったことを主張したいらしい。だがこれは、ついさっきまで、童貞は僕ですとか言って泣いていた彼の行動と思い切り矛盾する。
内心あきれたが、今市のことは一旦無視することにした。
「童貞がどちらの控室にいたかを考えるとき、カギになるのは純君の存在です」
俺は言った。
「やっぱりそうですよね」
近藤はそう言って、得意げに隣の黒咲を見た。
「近藤さん。とりあえず俺の話を聞いてください。他の方もお静かにお願いします。俺にとって皆さんは、誰も信用できないのですから。非童貞の中にも仕込み役者がいる疑いがある以上、信用できるのは、素人の一般人であることが確定している純君の発言だけです。ここにはもういませんが」
「だったらやはり、純君と同じ控え室にいた私と半田さんは、童貞ではないということでいいですね?」
「近藤さん。すみませんがちょっと黙っていてもらえますか。俺の中では四人とも等しく童貞の容疑者なんです」
俺の言葉に、近藤は仕方なく口を閉じた。
「おそらく近藤さんはこう言いたいのだと思います。純君は素人の一般人で、ゲームのトリックは知らされていない。ですが、さすがに同じ控室で童貞のセックスが行われているのを見たら、運営が仕掛けたからくりに気づいてしまう。彼がどんなに鈍感だったとしても。そして、青臭い正義感から報酬などどうでもよくなって、後半開始後、解答者の俺にばらしてしまう恐れがある。だから純君のいる控室でセックスを行うことはできない。そういう主張ですよね。近藤さん」
「ええ、そうです」
近藤は俺の言葉を肯定した。
「それがそうとも限らないんです。対象者が純君と同じ控室にいたからといって、童貞の嫌疑から外れるわけではありません。それは、純君がかん口令を命じられているとかそういうことではなく、純君自体が欺かれている可能性があるからです。ではどのように欺かれているのでしょうか。それを考えるとき、控室に関する福助の発言と、シェイプシフターの存在が重要となります」
《シェイプシフター?》
福助が素っ頓狂な声を出した。
対象者達も一様に驚いた顔を見せている。
「ああ、すみません。シェイプシフターというのは俺が頭の中で勝手に名付けた属性のことでした。シェイプシフターとは、非童貞の中に仕込まれた役者のことで、童貞が隠れるのをアシストしたり、解答者を間違った方向へ誘導したりする存在のことです。変化者という意味を込めて、そう命名しました。話を戻しますが、福助は控室に関して二つ、興味深いことを言っています。先ほどの、『全員休憩していただけだ』、というのもその一つです。もう一つは、『控室はゲーム室と同じ四角形をしていて、このゲーム室よりは狭い』という意味の発言です」
《それがどうした?》
福助が聞いた。




