平木の推理⑥
「そうだ。だから俺は、解答用紙にそう書いた。童貞はいない、と」
俺は胸を張って言い切った。
《なかなか面白い推理だった》
福助はしみじみと言った。
《では、解答の正誤判定を発表しよう》
「待ってくれ!」
慌てて福助を制止する。
《どうした? 》
「もし誤答だった場合、ただちに強制連行されるのは嫌だ。誰が童貞だったのか、俺は知らないままになってしまう。せめて俺の推理を全部話して、童貞が誰だったかをはっきりさせたい。もし俺の書いた解答が誤答だとしても、このゲームをやり切ってから地獄へ旅立ちたい。なあ福助。頼む」
本心だった。
《いいだろう。話してみろ。それくらいの権利はある》
福助は許可した。
「ありがとう」
俺は福助人形に向かって軽く頭を下げ、深呼吸をした。
「俺の記入した解答は正しかった。童貞は中断時間に、控室で無事童貞を卒業した。対象者の中に童貞はもういない。そう仮定して話を進めます」
俺は立ったまま、椅子に座っている四人の対象者と順に目を合わせていった。この中に、休憩中断中セックスをして、素知らぬ顔で戻って来た男がいるのだ。
「では、その男、中断中の十分間に、童貞から非童貞になった人物は一体誰なのか。そのことについて論述したいと思います。ここからは、その人物のことを便宜上『童貞』と呼びます。正しくは元童貞ですが。ともかくその童貞が誰かと考えたとき、十分間の中断中童貞は左右どちらの控室にいたのかがとても重要になってきます。なぜなら『中断中、対象者は控室で何をしていた?』という俺の問いに福助は『全員休憩していただけだ』と答えているからです。福助のそのセリフから、休憩という言葉が休息かセックスのどちらを表すかは別として、対象者は控室の中にいた、という解釈が成り立ちます。もし対象者が控室の外へ出てしまっていたら、福助は嘘をついたことになりますから」
《休憩中断中は、対象者は全員控室からは出なかった》
福助は確認するように補足した。
「だとしたら私が入った控室に童貞はいませんよ」
近藤が言った。




