平木の推理④
「中断中控室でセックスが行われたことに気づいてしまうと『富豪はこんなゲームを見て一体何が面白いんだろう』という常に付きまとっていた疑問も、たちどころに氷解します。このデスゲームは、解答者が童貞を見つけることともう一つ、童貞が十分間という短い時間で童貞を卒業し、何事もなかったような顔をして後半ゲーム室に戻れるか、という要素も含んだ二本柱で構成されていたのです。おそらく、控室の状況はリアルタイムで中継され、富豪達が見ているという構図でしょう。ただの童貞当てゲームに童貞喪失ショーが加わると、このイベントはぐっとスリリングなエンターテイメントに変化します。いやむしろ、童貞卒業チャレンジの方がメインと考えた方が自然でしょうか。おそらくこのデスゲームの製作費は、対象者やスタッフの報酬、会場費等を概算すると、一千五百万円程度は掛かっているでしょう。お客さんの富豪が何人観ているのか知りませんが、一人当たり数百万は支払っていると推測できます。そう考えると、童貞当てクイズだけでは、絵としても弱いのです。金持ちというのは、価値を感じたものには金を惜しみませんが、価値のないものには一円も使いたくないという習性をもっていると聞きますし」
マジックミラーの向こうの富豪達は聞いているだろうか。
「中断の十分という時間は絶妙だと思います。五分だと、行為をして着替えて戻ってくるのは難しい。逆に十五分では長すぎて、控室で何かあったんじゃないかと怪しまれる。まあ、今になって考えると、童貞を当てるだけのゲームなら、時間の長さに関わらず休憩時間自体が別に必要ないのではないかと思いますけどね。それをごまかすために、福助がたくさんしゃべってくれたのかもしれません。さらに、中断中タイマーが止まったままだったのもおかしいです。本来なら十分という時間を正確に計測すればいいのに。計測しなかった理由は、童貞が着替えるのに遅れたりして、一分くらいオーバーしてもおまけするためだったと考えれば納得できます。俺はまた、なぜ偽パイロットを当てろとか、無免許医師を探せではなく、童貞を探せなのかということも常々疑問に思っていました。しかし、これも今となっては説明がつきます。十分という短時間で無免許医が医師免許を取得して戻ってくることは不可能だからです。それが、このゲームが童貞を探せ、である必然性です」
「しかし、それなら福助のあの発言はどうなりますか?」
そう聞いたのは、またしても近藤だった。




