表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/63

タイムアップ

《おい、残り五分だ。解答用紙を渡そう》

 福助の頭の割れ目から、選挙の投票用紙ほどの大きさの紙が出てきた。

《この紙に答えを記入して、残り時間がゼロになる前に、紙が出てきたスリットに差し込め。一秒でもオーバーしたらアウトだぞ》

「待て!」

《なんだよ》

「対象者の名前の正式な漢字がわからない」

《相変わらず面倒くさいやつだな。答えの表記は何でもいいよ。平仮名でもカタカナでも》

 答えの表記?

 俺は解答用紙を手に取った。

 なんだろう。この違和感は。

 タイマーを見る。

 デジタル表示の減少につれ、心拍数が跳ね上がっていく。

 目を閉じると、いよいよベーリング海の荒波の音が鼓膜の内側で響いているのが聞こえてきた。

 落ち着け。

 童貞の存在を見抜けなければ、俺は殺される!

 そのときだった。

 忘却の彼方から、問題文の一節が蘇ってきた。


 

《見事童貞の存在を見抜くことができたら君の勝ち》

 

 福助は確かそう言ったのだ。


 やはりこの謎を解く重要な鍵は、問題文に隠されていた。だから福助は一度しか問題文を言わなかったし、紙に書いて貼っておいてもくれなかったのだ。

 そうか、そういうことだったのか!

 俺の中で推理の歯車が噛み合い、回転を始める。

 思い返してみると、福助は、確かに嘘はつかないかもしれなが、あいまいな表現をしたり、都合の悪い質問には沈黙したりすることが散見された。

 だとしたら、あの福助の一言がどうしても邪魔になる。

 あの一言さえなければ。あれをどう捉えるべきか。

 その判断には、理論だけではなく、直感的な思い切りというものが必要になってくる。

 とにかくここはアクセルを踏み込んで突っ切るしかない。

 間違いない。

 自分を信じろ。


 童貞はあの二人のどちらかだ。


 しかし、俺の推理が正しかったとしても、合理的な説明がつかない事象がある。そこはどう処理する?

 いや、些細なことを気にしている場合じゃない。

 わからないことがあってもいい。

 前に進むんだ。

 時間がない。


《おい。残り時間二分を切ったぞ》

 わかってるよ!

《タイムリミット三十秒前になったら、特別大サービスでもう一人非童貞を教えてやろうか? ただし、今度は二百万円だ。なーんてね。ははっ》 


 くそっ。


 舐めやがって。


 だがもう覚悟した。


 こう書くと決めたんだ。


 俺は、解答用紙にペンを走らせた。

 そして、福助の頭のスリットに紙を滑り込ませた。


 タイマーは残り一分少々というところだった。

 ゲーム室が静寂に包まれる。いつしかデジタル表示がゼロになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ