大ヒント
《くっくっく。お困りのご様子かな》
久しぶりに福助がしゃべった!
「ああ。完全にお手上げだよ」
《そうか。では大ヒントをやろう》
待ってました、という態度を出さないよう必死にこらえた。
《非童貞を一人教えてやる》
「ありがたい。それは、俺が選べるのか?」
《そんな大サービスするかよ。私が指定した一人だ》
「わかった。早く言え」
《ただでは教えられない。この情報の料金は八十万円だ》
「俺はそんな金持って無い。それくらい福助も知ってるだろ」
《いや、あるはずだ》
「無いと言ったら無い」
《賞金の百万円があるじゃないか》
「それはゲームに負けたら手に入らない金だ」
《賞金の前借を認める。負けたときは強制労働二か月延長だ。どうする?》
三年も三年プラス二か月も大して変わらない。悪い話じゃない。
「わかった。八十万支払う。早く言え!」
俺は迷わず言った。
《小野寺純は非童貞。素人の一般人だ》
福助は言った。
それを聞いた小野寺は、緊張から解放されたように、深いため息とともにがっくりと肩を落とした。
「だから、何回も言ったでしょう。僕は童貞じゃないって」
小野寺は息も絶え絶えに言う。
これで四分の一になった。
加えてこの瞬間から、小野寺の発言は一気に信頼度の高いものとなった。
「純君!」
非童貞は四人だが、素人の一般人の人数はわからない。残りの非童貞の三人は、全員シェイプシフターかもしれないのだ。
「何でもいい! 知ってる情報を教えてくれ。時間がない!」
俺は懇願するように言った。
「そう言われても。もう全部話しましたよ。僕は非童貞です」
「それはもうわかった。些細なことでいい。運営スタッフに言われたこととか。休憩中控
室で起こったこととか。彼女の本名とか」
「彼女の本名は渡辺葵です」
俺の必死さが伝わったのか、小野寺はいとも簡単に彼女の名前を口にした。反射的に近藤の方を見たが、特に反応がないところを見ると、近藤の娘が小野寺の彼女という案は間違いだったようだ。
「控室で何か変わったことは?」
「ええと、特になかったと思います」
「じゃあ休憩中、近藤さんか半田さんの行動に変わったことは?」
「いえ、特に気づきませんでした。すみません」
「何か思いついたらいつでも教えて」
そう言うしかなかった。
《おい、残り五分だ。解答用紙を渡そう》




