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疑問点の確認①

「近藤さん」

 俺は近藤に問いかけた。

「控室について質問させてください」

「はい?」

「あなたは最初、黒咲さんと一緒に左の扉から出て来た。ですが、休憩時間には右の控室に入った。それはなぜですか?」

「それは、ええと」

 やや躊躇し、近藤は意外な言葉を口にした。

「運営スタッフの方にそうするよう言われたからです」

「え?」

「ですから、途中で十分間の休憩が入るので、そのときは反対側の控室へ入ってください、という指示が事前にあったからです」

「でも最初同じ控室で待機していた黒咲さんはもとの左の控室に戻っているわけですよね。しかしあなただけ右の方へ行った。変だとは思わなかったんですか?」

「思いませんでした。確かに、言われてみると変ですね。でもそのときは、それぞれ別の指示が出ているのかと思って、特に気にしませんでした」

「運営スタッフが近藤さんにそのような指示をした理由は何ですか?」

「特に聞いていません」

「では、近藤さんはどんな理由でスタッフがそう指示したと考えますか?」

「まったくわかりません。いや、本当に申し訳ないです」

 こんなものなのかもしれない。

 俺は命を賭けているが、対象者は性体験を話して高額報酬がもらえるトークイベントくらいにしか思っていないのかもしれない。

 だからスタッフから指示があっても、特にその理由などを考えることもせず、はいそうですかわかりました、と右の控室に入ったのかもしれない。

「他の方はどうでしょうか」

 俺は対象者を見渡した。

「どちらかの控室へ入るよう指示を受けたりしましたか?」

 俺の投げかけた疑問に、黒咲と小野寺は首を振った。あとの二人も似たような反応を示した。

 では近藤だけにそういう指示が出ていたのだろうか。

 何のために?

 それとも誰かが嘘をついているのか。あるいは全員が嘘をついていることも考えられる。

 正確な情報が欲しい。

「福助!」

 こいつに頼るしかなさそうだ。

「運営スタッフが、近藤さんに休憩時間中右の控室へ入るよう指示したのは本当か?」

《さあ。どうだろう》

「中断中、対象者は控室で何をしていた?」

《全員休憩していただけだ》

「控室の中はどうなっている?」

《どうって、別に。ゲーム室と同じ四角い部屋だよ。ゲーム室よりは狭いがね》

「誰かが嘘をついていることはわかっているんだ。非童貞の仕込み役者を教えろ」

《……》

「じゃあ仕込み役者の人数だけでも言え!」

《……》

「このゲームはそもそも理論的に解けるシステムになっているのか? 正答を導き出すのに十分なヒントは解答者に提示されているのか?」

《……》

「時間が迫っている。何でもいいからヒントをくれ!」

《……》

 くそ。福助がしゃべらなくなってしまった。

 対象者と話せ、ということらしい。


 とりあえず疑問に思ったことを聞いてみるしかない。

「黒咲さん。あなたは端正な顔立ちをしているが、中学まではモテなかったと言った。それは不自然ではないですか? もしかして整形してますか?」

「いや、整形はしてませんよ」

「ではなぜ高校からモテるように?」

「わからないけど、そういうことってよくあるじゃないですか。環境が変わったら急に自分の評価も変わる。みたいな。例えば、小学校は足の速い人が、中学ではヤンキー系とか球技ができる男子がモテるじゃないですか。高校になってやっと俺の時代が来たんですよ」

 ありそうな気がする。

「話は変わりますが、黒咲さんは童貞のことをどう思う?」

「別に。何とも思いませんが」

「じゃあ三十歳の童貞男のことは?」

 今市を想定した質問だった。

「素人童貞の三十歳のこと?」

「いや、真性童貞」

「そうだなあ」

 黒咲は顎に手を当て、上目使いをした。その仕草がいちいちかっこいい。

「三十歳の真性童貞は……卵を割らないでオムレツを作る方法を延々と考えてる人。かな」

 彼はそう言ってほほ笑んだ。



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