対象者の自己紹介1
ゲーム室の左右にある扉が勢いよく開いた。
しかし、ぽっかりと開いた扉からは、誰も出てこなかった。
少し待っても、人が現れる様子はない。タイマーのカウントダウンはそうしている間にも秒数を減らしていく。
二十秒が経過した。
おい、どうなってんだよ。
今、自分の身に何が起こっているのか、理解が追い付かない。
身を乗り出して扉の内部を覗き込もうとしたとき、ようやく男達が現れた。
左の扉からは、眼鏡をかけた中年男性と長身のイケメンの二人。
右の扉からは、ブレザーを着た高校生風の男、筋肉質で短髪のいかつい男、チェック柄のシャツを着た猫背気味の男の三人が現れた。
あ、こいつが童貞だ。
チェックシャツの男の自信なさげにきょろきょろと周りをうかがう仕草に、俺はそう直感した。
対象者の五人は、並べられているパイプ椅子に座った。
俺は呆気にとられていた。
いきなり初対面の男達の中から童貞を探せと言われても。
何をどう手を付けて良いのかわからなかった。
それと同時に、「こんな問題を俺にやらせるのかよ!」という因果も感じる。
《おい、解答者。何ぼーっとしてんだよ。さっさと始めろ》
福助の言葉にはっと我に返る。
確かにその通りだ。
会話をしなければ何も始まらない。
こうしている間にも時間は減っているのだ。
「ええと、皆さん初めまして。平木直太(ひらきなおた)と申します。二十四歳です。よろしくお願いします。ところでゲームのルールは聞いていますか?」
俺の問いに、対象者達は皆頷いた。
「一応言っておきますが、これは五人の中に一人隠れている童貞を探すゲームらしいです。当てられないと、俺には重いペナルティが待っています。性的なことや言いにくいことをこれから聞くと思いますが、皆さんからの情報が俺の運命を左右します。ですので、ご協力お願いします」
俺は頭を下げた。
「じゃあ時間も限られていますので。こちら側から順に自己紹介してもらってもいいですか? 名前、年齢、職業、あと手短に初体験の年齢と状況、これまでの経験人数も教えてください」
とりあえず導入の予備情報としては、こんなところだろうか。
「近藤誠一と申します」
左端の男は言った。
質の良さそうなポロシャツに折り目のついたスラックス。黒縁の眼鏡にさっぱりした髪型の、どこにでもいそうなサラリーマン風の外見をしている。
「四十四歳。食品メーカー勤務の会社員です。二歳年上の妻と小学生の娘がいます」
なんと。お父さんが童貞候補とは……。




