今市陸の性体験の聞き取り③
今市について考察しなければならない。
社会人になるまで彼女ができなかった男というのは、ボーナスステージを無駄にした者である。青春時代というのは、同じ教室に、同じ人数の同世代の男女がいて、席替えや学園祭、体育祭や修学旅行など、各種イベントが用意されている。毎日が婚活パーティーのようなものだ。その中で彼女を作れなかった男が、果たしてハードステージの社会人になって初めての彼女を作ることができようか。
社会人で初めての彼女を作るという難題をクリアする男性も、例外的にはいるかもしれないが、そういう男性はそれなりの潜在能力を備えているものだ。
では、今市はそういう男性に当てはまるか?
答えはノーだ。
彼を見ていると、そういうイメージは全く浮かんでこないのである。
いくら女性が増えたといっても、自動車工場の期間工という職場でインセル今市が彼女を作るのは大変そうだし、マッチングアプリの競争を勝ち抜くのはもっと難しいのではないだろうか。
素直に考えて、五人の対象者の中で、童貞はこいつしかいないのだ。
五人が現れたとき、一目見てこいつが童貞と確信した。それほど今市からは童貞臭がプンプンする。
なぜ俺はそこまで今市にこだわるのか?
それは、この男が五人の中で俺に最も近い人間だからだ。
認めたくはないが、俺は、今市に自分を投影しているのだ。
「今市さんの二人目の彼女との出会いについて教えてください。マッチングアプリというのは、どうすればうまく出会えるのですか?」
「さあ。忘れました。最近やってないので」
今市は気のなさそうに答えた。
「マッチングアプリは、二十代女性と連絡を取れるようになるまでの競争率は大変厳しいと聞いています。どうやって会えたんですか?」
「だからよく覚えてませんよ。そんなこと」
今市は言った。
「普通にプロフ登録して、メッセージ送ったらマッチングしたんだと思いますよ。確か」
「そうですか。では、最初のデートはどこに行ったんですか?」
「どこだったでしょうか。ちょっと、五年も前のことだから」
「たった五年前じゃないですか。はぐらかさないでください」
俺がそう言うと、また今市が豹変した。
「それはこっちのセリフだろ。お前こそはぐらかすなよ」
今市は、再び敬語を捨てた。
「何のことですか?」
とは言ったものの、やはり逃げられそうにない。
「休憩前にも聞いただろ。お前は童貞なのか?」
今市だけじゃない。他の対象者も気になっていたはずだ。
偉そうに尋問しているお前自身はどうなんだ?
五人の目がそう語っている。
「俺は……」
再びアンケートのことがよぎった。福助を一瞥し、覚悟を決めた。




