10分間の中断②
《知りたいことを言ってみろ》
「童貞は誰だ?」
この問いに福助は無視した。
「じゃあ非童貞は?」
《いい加減にしろ》
やはりこんな聞き方は通用しないようだ。
対象者の出身地、誕生日、家族構成。いろいろとわからないことだらけだが、有効な質問は何だろうか。
「半田のタトゥーは本物?」
《本物だが、そんな質問でいいのか?》
「いや、今のは無し。童貞の報酬について聞きたい」
《ふむ。会話の中で少し出てきていたな》
近藤は二十万円のバイト代で参加していると言った。他の成人の対象者も同額以上の報酬を得ていると推測された。小野寺だけが三万円だった。
「あれは正しいのか?」
《わかった。教えてやろう。童貞は嘘をついている。童貞の報酬は二十万でも三万でもない。数百万の借金をチャラにすること。そして、もし自分が童貞と見破られた場合、それ相応のペナルティがある。お前と同様にな》
「三年間の強制労働か?」
《まあそれに近いものだ》
童貞も過酷なミッションにさらされているというわけか。
《他に質問はあるか?》
「近藤さんに妻子がいるのは本当?」
《それは教えられない》
「黒咲は整形してる?」
《さあ。それは把握していない》
「小野寺の在籍してる高校の偏差値、男女比、セックスの経験割合は?」
《知らんな。そんなこと。本人に聞けよ。でもそれを調べて何の役に立つ?》
確かにそうだ。
「半田がレイプしたのは本当?」
《だからそれを教えたら半田が非童貞と認めてしまうことになるだろ》
「今市の職歴は本当?」
《さあどうだろう》
「対象者は全員日本人?」
《たぶんな》
「対象者の中に性感染症の陽性者はいる?」
《それもこちらでは把握していない》
福助が思いがけなくこちらの質問に答えてくれている。この勢いを利用したい。
直接姿が見えないだけに、福助の人物像も気になるところだ。
「ゲームマスターが福助人形である意味は?」
《特に意味はない》
「マジックミラーの向こうで福助に声をあてているあんたは童貞?」
《私は童貞ではない》
福助は答えた。
《そもそも私は対象者に入っていないから、童貞だろうが非童貞だろうが関係ない》
「じゃあマジックミラーの向こうで見ている富豪の中に童貞は?」
《お前な。いくらなんでも言っていいことと悪いことくらいわかるだろ。クライアントを怒らせてゲームが強制終了さてれも知らんぞ。まったく。いい加減そういう発想から離れろよ。五人の対象者の中から童貞を探すゲームなんだよ! このゲーム室の中でな。マジックミラーの向こうにいる観客の方々は関係ない》
それはわかっている。
だが、どんなバカげた発想であっても、可能性の芽は摘み取っておきたい。
ここでまた、思いついたことがあった。
「そういえばさ、童貞の定義ってなんなの?」




