前半終了
「おい。あんたさあ、さっきから何なんだよ」
今市の口調が変わった。
「偉そうによ」
「な、なんですか。急に」
俺はうろたえた。
「刑事みたいに人を疑いやがって。気に入らねえな」
完全に頭に血が上っているようだ。
そう言われても、こちらもデスゲームだから仕方なく聞いているだけだ。本心では初対面のおっさんとかニートの性体験なんかに何の興味もない。
深く突っ込むと機嫌を損なう。
しかし、質問しなければ情報は得られない。
俺はこのゲームの難しさに直面していた。
「童貞がどうしたとか、セックスがどうしたとかよ。何でそんなこと、あんたに話さなきゃいけないんだよ」
どうやら彼は、キレるとめんどくさいタイプのニートのようだ。
それとも、追求をかわすためにキレたふりをしているのだろうか。どちらにせよ俺にとっては好ましくない状況だ。
「それは、そういうゲームですから」
俺は答えるしかなかった。
「じゃああんたはどうなんだよ?」
「え?」
「だから、お前は童貞かって聞いてんだよ!」
今市の眼光が俺を突き刺した。
ここはどう答えるべきか。
俺の手の平に汗がにじんだ。
そのときだった。
《はい。今、制限時間の半分が経過した》
福助が言った。
タイマーはちょうど四十五分で止まっている。タイマーから目を離していたら、いつの間にかもうそんな時間になっていた。
《ここで、十分間の中断に入る。対象者は控室へ入るように》
そんなの聞いてなかったぞ。
左右の扉が再び開いた。
「福助。十分間対象者とは話せないのか?」
《当たり前だろ。タイマーは止まっているんだ。お前の大好きなシンキングタイムがもらえただけでも感謝しな》
言われてみれば確かにそうだ。
黒咲は左へ、近藤と小野寺と半田は右の控室へ入っていった。
しかし、今市だけがパイプ椅子に座ったままだった。
《どうした? 今市。休憩時間だぞ》
福助が今市に尋ねた。
「あの、半田の野郎と同じ控え室に行きたくないので、ここで待機していいですか?」
今市は言った。
《だめだ。対象者は、中断中は控室に入るルールだ》
「じゃあこっち側の控室に行きますね」
今市は立ち上がり、黒咲と同じ左の控室へ入っていった。両サイドの扉が閉まった。
ゲーム室には俺と福助だけが残された。




