半田義春の性体験の聞き取り②
「薬の知識はどうやって仕入れたんですか? また、薬自体はどこで手に入れましたか?」
「知識はネットで」
「薬は?」
「ドラッグストアで」
「ということは市販薬を?」
「うん。市販薬」
小声でそう言い、半田は下を向いた。
自己紹介のときの勢いが薄れてきた気がする。
今頃になって自分のしでかしたことに罪の意識を感じ始めたのだろうか。それはそうと、市販薬なんかで昏睡させることができるものだろうか。まあ、お酒と混ぜたらそういう効果を生むものもあるのかもしれないが。この辺りも知識がなく、判断がつかなかった。
俺はその後、レイプの過程や裸の写真を撮ったことについて質問したが、言葉数が少なすぎ、童貞非童貞を判別できるような証拠は得られなかった。
半田の話では、女性は昏睡が深く、レイプに気づいていなかった。警察に駆けこまれないよう脅すために撮った写真は、結局使うことがなかったという。
初体験のレイプ話の次に、風俗店の女性とのセックスや彼女との直近の性体験について尋ねてみたものの、こちらもあまり深い話は聞けなかった。
俺は別な角度からアプローチした質問を試みた。
「ところで半田さんは、二十万円の報酬を何に使う予定ですか?」
「ええと、それは」
少し間を置いて、半田はこう言った。
「結婚式の費用に充てようかと」
俺は眉間にしわを寄せた。
ふと見ると、近藤も不快感をあらわにしている。
いや。しかし現実とは案外こんなものかもしれない。
人間的に優れているかどうかということと、恋愛や結婚をする能力は関係ない。いい人だから結婚できると思ったら大きな間違いだ。それは、俺がこれまでの短い人生で出会った人間を見ればわかる。
犯罪者であろうが、他人を傷つけていようが、モテるやつはモテるし、結婚する奴は結婚する。
俺は、半田の婚約者にレイプの過去を暴露してやりたい衝動に駆られた。
昏睡レイプは、ただ同意のないセックスをしたとか、それだけの問題じゃない。アルコールと催眠薬物を合わせて飲ませることを医薬品メーカーは想定していないから、そのまま目が覚めないケースや、昏睡状態が長引き、脱水症状や低体温症の併発で死に至ることもあり得るだろう。また、意識が朦朧としたまま帰宅させたとき、駅のホームから転落したり、道路へ飛び出したりすることも予測できる。また、レイプ被害に遭った女性の心的外傷は計り知れず、性的被害者の女性の自殺率は高いらしい。
ドラッグレイプは間接的に人を殺すかもしれない危険性をはらんでいるのだ。
俺に専門的な知識はない。だが、ちょっと考えればそれくらいは容易に想像がつく。
それをこの男はわかっているのだろうか。
もしこの男がやったことが事実なら、警察に突き出してやりたいところだが、七年前の話だ。それに、このゲームが終わったら、半田はどこか知らない場所で俺とまったく関わることもなく暮らすのだ。
どうすることもできない。
俺は、この男が役者の演じる童貞であってほしいと思った。
それはともかく、問題は半田が童貞かどうかである。
腕のタトゥーは本物に見えるが、今時珍しくも無い。体格は筋肉質で、小さな目にはギラギラした力を感じる。
偏見かもしれないが、こういったヤンキー系の人物は初体験や結婚が早い。レイプの過去さえ知らなければ、半田のようないかつい風貌や性格を好む女性は一定数いる。仮にモテなくても、彼ならばセックスというゴールにたどり着くための手段は選ばないだろう。それは実際半田の口からも語られている。ちょくちょくデリヘル嬢と交渉し、追加料金を払って本番行為をしているという。
普通に考えて、彼は童貞ではなさそうなイメージを受ける。




