半田義春の性体験の聞き取り①
四人目は半田義春だ。
半田に話しかけるとき、躊躇した。
何に迷ったかというと、この男に敬語を使うべきかどうかということだった。年長者の近藤には敬語、年下の黒咲と小野寺には無意識に平語で話しかけていた。
自称二十六歳の半田には敬語で話しかけるのがセオリーだが、レイプ魔に敬語を使う気にはなれなかった。しかし、彼のようなヤンキー系や体育会系の男は、年下にタメ口を使われるのを嫌がりそうだ。効果的に情報を引き出すためには下手に出ておいた方がよさそうである。
最も二十六歳という年齢も本当かどうかわからなのだが。これは他の対象者にもいえることだった。
「福助」
《なんだ》
「半田さんの実年齢は二十六歳か?」
《半田義春は二十六歳だ。ついでにサービスで教えてやるが、対象者が語った年齢は全員本当だ》
かなりいいことを聞いた気がする。
が、考えてみれば嘘をつく側にもメリットはある。実年齢と設定上のキャラクターの年齢は一致させておいた方が無難だ。例えば、初体験の年に起こった社会的出来事などを聞かれたとき齟齬が生じにくい。
「ちなみに福助。あんたは何歳だ?」
《答えたくない》
「そうか。俺が福助に敬語を使うかどうかで、あんたが教えてくれる情報は変わるか?」
《いや、変わらない。言葉遣いは関係ない。情報を提供するかどうかは、私の気分で決める》
「それを聞いて安心した。では福助、お前には敬語を使わないぞ」
《お好きにどうぞ》
俺は半田に向き直った。
「では半田さん、よろしくお願いします」
半田は大股で座ったまま、仏頂面で目を合わせた。
「先ほど、会社員とおっしゃいましたね」
「ああ」
気の抜けた声。
「どのような仕事をされているんですか?」
「……。製造業」
「製造業といってもいろいろありますよね。それに職種も。営業とか経理とか品質管理とか」
「製造業つったら製造業だよ」
「ええと、体格が良いので現場ですかね?」
「……」
返答がない。どういうつもりなのだろうか。
「そうですよね。仕事のことは関係ないですよね。童貞を探すゲームですから。これは失礼しました」
俺は営業スマイルを作った。
「じゃあ、半田さんの女性関係について聞いちゃおうかな。男らしいからモテそうですよね」
完全に口から出まかせだった。俺が女ならこんな男に近づきたくもない。
半田の方も、俺のおだてに全く喜んではいない。
「初体験はどんな状況ですか?」
「……」
「半田さん?」
「さっき言った」
「もう一度詳しく話してもらえます?」
沈黙。
静まり返るゲーム室。
「福助!」
《なんだよ》
「半田さんが全然しゃべってくれない」
《くっくっく》
「これじゃゲームにならない。なんとかしてくれ」
俺にとって対象者が性体験を話してくれないことは死を意味する。
《まあそうイライラするなよ。対象者が話すか話さないかは自由だ。ただし、平木にも一理ある。多少はしゃべってもらわないとゲームが盛り上がらない。半田ももっと話してくもらえるとうれしいな》
ほら見ろ。
俺は再び半田に強い視線を投げつけた。
「では気を取り直して。初体験の昏睡レイプの状況を詳しく話してください」
「話せと言われても。あんま覚えてないんだけどな」
運営に指摘され、半田も渋々口を開いた。
「まあ、最初はグループ交際みたいな感じ? 気の合う仲間で、べーべキューしたり、車で海に行ったりとか。で、ある日の夜、居酒屋で飲んでたとき、一人の女の子が寝ちゃったから、タクシーで連れて帰って」
「寝ちゃった?」
他人事みたいに言いやがって。
「お酒に酔いつぶれたわけではなくて、あなたが飲み物に薬を入れたからそうなったんですよね?」
半田は無言で頷いた。
「そこまでしてセックスしたかったんですか?」
「いやあ、ちょっと。どうしてもというわけじゃ、ないけど」
歯切れが悪い。
「薬の知識はどうやって仕入れたんですか? また、薬自体はどこで手に入れましたか?」




