小野寺純の性体験の聞き取り⑤
「福助!今純君が言った、映画に関する内容は本当か?」
《知るかバーカ。何でも教えてもらえると思うなよ》
即座に拒否された。
俺は口をとがらせた。
自分で何とかするしかないらしい。
さて、小野寺は駅を出るとき雨が降って来たと言った。
映画鑑賞してランチし、立川駅から玉川上水駅まで移動したタイミングだ。マンションの場面で、部屋を暗くしたかったがまだ夕方なので無理だったという記述もある。雨が降ってきたのは十五~十六時頃と思われる。二週間前の土曜日、その時間帯に東京都西部で雨は降っていただろうか。残念ながら全く覚えていない。
しかしここで、二人の行動に一つ疑問点がある。
雨が降ってきたというのに、二人は、駅から出ないで少し止むのを待つとか、コンビニで傘を買うこともせずに、濡れながら歩いているのである。そのくせ、雨に濡れたから風邪を引いたら心配、などといちゃついている。そんなに心配なら最初から濡れないようにすればいいし、濡れることが想定済みなら「風邪を引いたら困る」とか取り繕うようなことは言わなければよい。
この不自然な行動は、小野寺純君童貞説を裏付ける証拠となりえるだろうか。
いや、ならない!
なぜなら恋愛とロジックは往々にして相容れないものだからだ。それに、高校生という年代を考えると、これはごく自然な行動ともいえるのだ。
高校生にとって映画を見て外食をするのはかなりの出費だ。五百円のビニール傘を買ったら予算オーバーだとしてもおかしくはない。後は家に帰るだけという状況で、濡れて帰るというのは、自分も高校生の頃よくやっていたように思う。俺の場合は一人だったが、彼らは二人なのだ。どしゃぶりの雨の中手を繋いで帰るなんて、いかにも青春っぽい。
さらに彼らの場合、濡れた髪を乾かすという口実づくりに、雨はもってこいのシチュエーションだ。
「雨が降ってきたね。じゃあ傘をさして帰ろうか」と真顔で言うような男には永遠にロマンスはやってこない。
俺がそうであるように。
俺は、二十四年間の人生で一度も女性と付き合ったことがない。
そのとき、思い出したくもない一人の男の顔が浮かんだ。




