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四銃士  作者: 黄坂美々
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6.罠

 アレンとティムは裏通りの空き家前に立っている。ドアが壊れており、二人はそこから中の様子を見る。灯りもついておらず人気もない。ティムが小声で言う。


「誰もいないよ?」


「出払ってるのかな。入ってみる?」


「そうだね。今のうちに救えるかも」


 二人は空き家に入り、辺りを見渡す。奥にドアがあるのが見える。二人がドアに近づこうとしたとき背後から声がする。


「いらっしゃーい。待ってましたあ」


 二人が驚いて振り返ると、市場をうろついていた数人の少年たちが入り口を塞ぐように立っている。少年たちは鉄パイプやバットを手に持っている。アレンたちは半歩下がる。アレンが少年に問いかける。


「エミリーちゃんはどこ?」


 ティムも続けて言う。


「可哀想だよ。帰してあげなよ」


 少年たちは顔を見合わせて笑い出す。一人の少年が言う。


「あり金全部だせよ」


 少年たちはぞろぞろと集まり、アレンたちを取り囲む。アレンが周りを見回しながら言う。


「エミリーちゃんが先だ」


 リーダー格の少年が言う。


「お兄さん、まだ状況わかんないの?」


 そう言って、隣の少年に顎で合図を出す。合図された少年が入り口に小走りで駆け寄り、外を覗いて声をかける。すると先ほどの少女が中に入ってくる。アレンたちは驚く。


「見つかったか……」


 アレンが小声でつぶやき、少女を心配そうに見つめる。そのことに気づいた少女がアレンに言う。


「バカなの? まだ気づかないなんて。早くお金だしてくんない?」


 ティムの表情が険しくなる。


「騙したの⁉」


「騙される方が悪いのよ。ちょろすぎ」


 ティムが少女をにらみつける。


「帰ろアレン。最低だよこの子。性悪!」


 ティムは少女に向かって言い捨てる。


「カモを逃がすわけないじゃない」


 少女が腕を組みながら言う。少年たちが鉄パイプやバットを振りかざしアレンたちに襲いかかる。二人はギリギリでかわし、奥の部屋に逃げ込もうと駆け出す。しかしアレンが途中で捕まってしまい、バットで腹を殴られる。アレンは痛みでその場に膝をつく。少年たちがアレンを痛めつけようと周囲に集まりだし、ティムは天井に向けて発砲する。少年たちは音に驚いてティムを見る。ティムは少年たちに向けて銃を構える。


「アレンから離れろ! 次は撃つ!」


 アレンは膝をついたままティムを見上げる。リーダー格の少年が口を開く。


「物騒なもん持ってんじゃん。こえーなー」


 銃を構えるティムの手は少し震えている。それを見た少年たちは薄ら笑いを浮かべている。リーダー格の少年がアレンを盾にするように立たせ、首にナイフを突きつけて言う。


「どうする? これでも撃てるか?」


 ティムが戸惑いながら周囲を見渡す。


「ほら、銃よこせよ」


 アレンの首筋にナイフを突きつけながら少年が言う。ティムは静かに銃を床に置いた。


「ティム逃げろ!」


 アレンが叫ぶ。


「おまえは黙れ」


 そう言って少年がアレンを殴り、もう一度殴ろうとしたとき銃声が鳴り響く。少年の手元が撃たれ、持っていたナイフを床に落とす。少年は手から血を流し、皆は銃声のした方を見る。クレイグが銃を構えて立っている。


「クレイグ!」


 ティムが笑顔になる。クレイグが険しい顔で少年たちに言う。


「そいつら二人から離れろ! 撃ち殺すぞ!」


 少年たちは顔を見合わせるが動こうとしない。クレイグは近くの少年二人の太ももを打ち抜く。二人の少年は足を押さえその場にうずくまる。アレンが慌ててクレイグに言う。


「クレイグよせ!」


「黙れ! そんなんだからなめられんだよ!」


 少年たちは後ずさりし、アレンたちから離れる。ティムとアレンはクレイグのもとに駆け寄る。


「ありがとうクレイグ」


 ティムが言う。少女は慌てて、少年たちの背中を押す。


「ちょ、ちょっとみんな何やってるのよ!」


 クレイグが少女をにらみつけ言う。


「おまえが親玉か?」


 少女が一歩後ずさりする。アレンが少女に近づいていく。少女はアレンをにらみつけている。


「な、何よ。殴るなら殴りなさいよ!」


 アレンは少女に包帯を手渡す。


「あとであの3人に巻いてあげて」


「なんで……」


「これで止血してから、必ず病院に行くんだよ」


 少女はアレンをじっと見る。アレンはすぐにクレイグたちのもとへ戻り、空き家を後にする。



 馬屋前でブラッドが腕組して立っている。3人は小走りで近づく。ブラッドが険しい顔で言う。


「遅い。おまえらの時計どうなってんだよ」


「こいつらガキの集団に絡まれてたんだぜ」


 クレイグが二人を指さし言う。すかさずティムが笑顔で言う。


「クレイグが来てくれて助かったよ」


「でもあれはやりすぎだと思う。相手はまだ子どもだよ?」


 アレンは眉をひそめて言う。


「ああいう調子のったガキには誰かが大人は怖いって教えてやんねえとだめなんだよ」


 クレイグが言う。アレンが嫌そうな顔で言う。


「うわ、上から目線。そんなことしてたらいつか自分がされるから」


「子どもだからってなめてるからそうなるんだよ」


 ブラッドが言う。アレンは不満そうに目をそらす。ブラッドが話を続ける。


「アレンは子ども見たら殴るくらいがちょうどいいな」


「こっわ! やだよそんな友だち」


 ティムが言う。ブラッドは鼻で笑い、話を変える。


「そう言えば、酒場で人魚姫の涙のこと聞いてみたが、どっかで聞いたって奴と、人魚捕まえて泣かせるって奴がいたな。まあ、ただの酔っぱらいの話だからどこまで信用できるかはわかんないな」


「ひどいなあ。何かのたとえじゃないの? 本物の人魚の涙なら、人魚を感動させる方法考えなきゃ」


 そう言って、ティムが悩みだす。クレイグがブラッドに聞く。


「人魚なんか見たことねえよ。美人かなあ?」


「知るか」


「とりあえず今日は遅くなったし、最近ずっと野宿続きだったし、この街で泊まろうか」


 アレンがそう言って、皆も賛同し宿屋に向かうのだった。

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