43.命の選択
女が改めてケイを見つめて言う。
「じゃあ、再開ね。あなたは戦地に向かうことになりました。どちらの装備セットを持って行く? A、ヘルメットと防弾チョッキ。B、剣と銃。さあ、どっち?」
ケイが少し考えて答える。
「Bの剣と銃。だって戦えないじゃん」
「ブー! 不正解。戦地と言っただけで戦えとは言ってないわ。無闇に武装して行ったので殺されましたとさ」
女はそう言って、ケイに吹き矢を放った。
「この、クソ……女……」
ケイはそう言って意識を失った。
「ケイ! ケイ!」
アレンが叫ぶ。ティムが恐怖でうつむく。
「さあ、次は……」
女はそう言いながらティムにゆっくりと近づく。ティムはうつむいて目を閉じ、アレンは女をじっと見つめていた。女はティムの前で立ち止まって言う。
「あなた」
ティムが恐る恐る目を開け、女を見上げる。女はティムを見つめて言う。
「第三問。ナイフを持った大柄の男性と、銃を持った少女が向かい合っています。あなたはどうする? A、少女に銃を向け、武器を捨てるように言う。B、男性に銃を向け、武器を捨てるように言う。さあ、どちら?」
「えっ、どっち⁉ わかんないよ……どっち?」
ティムはおろおろしている。
「こんなの――」
「しっ! 口を出すのはルール違反よ」
アレンが話そうとするのを女が遮って言った。アレンは、ぐっと唇を噛みしめてティムを心配そうに見つめる。女はティムを見て言う。
「さあ、どっち? あと5秒。4、3、2、1……」
「B! 男を止める!」
ティムはそう言って目を閉じる。女はティムをじっと見つめて言う。
「残念! Aでした。人を見かけで判断してはだめよ? 少女に脅されていた男性は撃ち殺されちゃいました」
ティムの顔から血の気が引く。
「あなたもゲームオーバーね」
「待っ――」
アレンが女に言おうとしたとき、女が吹き矢をティムに向けて吹いた。矢はティムの腕に刺さり、ティムが矢を見つめて言う。
「嫌だ……死にたく……な……い」
ティムは意識を失い、涙が一粒こぼれた。
「ティム……」
アレンが肩を落とし、うつむく。女がアレンの前に立ち言う。
「次が最後よ」
「最初から渡す気なんかなかったんですね。さすが魔女、やり方が卑劣ですね」
アレンが鋭い目つきで女を見上げて言った。
「あら、怖いわ」
「3人は答えを間違えたんじゃない。あなたが答えをすり替えたんだ。いや、そもそも答えなんてのはなかった。相手の答え次第でどうとでもなるように作られているんだ。そうでしょ?」
女が笑みを浮かべて言う。
「ご明察。よくわかったわね。でもそんなに怒らないで。私、あなたのことは好きだからちゃんとした問題用意しているのよ?」
「どうして。ティムたちの何がいけなかったんですか⁉ 気に入らないからって、こんなの酷い!」
「そうね……。ブラッドは攻撃的。ケイは思いにふけらせてくれなかった。ティムは自分勝手で危険なことは全部誰かに押し付ける。あなただけが私や仲間のことをちゃんと考えてくれているわ」
「たった数分、数時間で全てを見たように言わないでください。ティムたちにもいいところはたくさんあるし、俺にだって悪いところはある。あなたに見えなかっただけです」
「そうね。きっとあるんでしょうね。でも好き嫌いをどこでいつ判断するかは私の自由よ」
アレンは視線を逸らして黙り込んだ。女はアレンを見つめて言う。
「じゃあ、話はこれくらいにして最終問題にいくわね。今の現状でどちらを選ぶ? A、果実をもらう。B、3人を生き返らせる。さあ、どっち?」
アレンは3人を見つめる。
「ゆっくり考えて。お茶を淹れて来るわ」
女が奥の部屋へと歩き出したとき、アレンが答える。
「B」
「え? 本当にいいの? もう少し考えてもいいのよ?」
女が振り返って言った。
「Bです」
アレンは女を真っ直ぐに見つめて言った。
「そう。意思は固そうね」
女はそう言って微笑んだ。
「大正解! お見事ね!」
女はそう言って、指をパチンと鳴らした。すると、アレンを拘束していた鉄の錠が外れた。そして、もう一度鳴らすと、女の手元に金色の果実が現れた。女は驚いて呆然としているアレンに果実を手渡して言う。
「これはあなたのものよ。大切に持って帰ってね」
女はそう言って優しく微笑んだ。
「え、あ、あの、正解って……」
「いやだわ。たった今、問題出したじゃない。もう忘れちゃったの?」
「え、だって……問題? あれは願望を聞くための二択だったんじゃ……」
「あら、ちゃんと問題って言ったわよ?」
アレンは力が抜けたように椅子にもたれてつぶやく。
「じゃあ、3人はもう……」
「ちゃんと確認しないの?」
女が言った。アレンは顔を上げ、急いでティムの元へと駆け寄った。ティムの胸に耳を当てたアレンから笑顔がこぼれる。
「生きてる」
女がパチンと指を鳴らすと、ベッドが4つ現れ、もう一度鳴らすとティムたちの拘束が解かれた。そしてティムたちの身体は宙に浮かび、ベッドへと運ばれた。
「彼らは朝まで起きないからあなたもゆっくりしていくといいわ」
女がフルーツバスケットを持って奥の部屋へと行こうとして振り返る。
「よかったら一緒にいかが?」
アレンは女について奥の部屋へと向かった。




