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四銃士  作者: 黄坂美々
41/45

41.アルカイド山へ

 翌朝、商人の家の前には30人くらいの様々な年齢の男女が集まっていた。クレイグ捜索隊である。アレンたちは皆に礼を言って、見送られながら出発した。それから小一時間ほど歩き続けてアルカイド山の麓にたどり着いた。足場はごつごつとした岩がたくさんあり、辺りには霧がたちこめている。山に入ると空気が少しひんやりとした。ケイが周囲を見渡して言った。


「たしかに気味悪いね」


 虫の声や鳥のさえずりも聞こえず、静けさに包まれていた。4人は周囲を警戒しながらゆっくりと進んだ。しばらく歩いてティムが言う。


「うさぎとか鹿とか一匹くらい出会ってもいいのに何の生物もいないのかな……」


 そう言った途端、一羽のカラスが木から木へと飛び移った。皆が驚き、カラスを見る。カラスは鳴き声を上げてどこかへと飛び去って行った。


「鳥はいたみたい」


 アレンがつぶやく。


「一羽だけな」


 ブラッドが意味あり気に言った。ケイが周囲を見て言う。


「こんな気味悪いとこに一泊するとか最悪だな……」


「一泊で済めばいいがな」


 ブラッドの言葉で皆の顔がひきつる。


「急ご」


 ティムがそう言って、少し早歩きで歩き出した。それから一日中歩き続けた。さすがに疲れた4人はその場に座り込んだ。


「なんかさ、進んでるのに進んでる感覚がしないな……」


 アレンが言った。


「わかる! 延々と同じとこ歩いてる感じ」


 ケイがすかさず返す。ブラッドがきょろきょろと周囲を見ているのに気づいたティムが声をかける。


「どうしたの?」


「いや、気のせいか……」


「何が?」


「誰かに見られているような視線を感じてな」


「え? いつから?」


「今日、一日中ずっとだ。いや、カラスを見た後くらいか……」


「そう言えば、あのカラス以降、他の動物一匹も見てないね」


「ああ」


 ブラッドがふと空を見上げる。霧が晴れて美しい満月が輝いていた。ブラッドは気にも止めず目を逸らしたが、違和感を覚えてもう一度じっと空を見つめた。その様子を見たアレンが声をかける。


「ブラッド?」


「アレン、空を見てみろ」


 ブラッドが言った。アレンが空を見上げ、ティムとケイも見上げる。


「何? 月じゃん」


 ケイが言う。アレンはしばらく見つめてからはっとする。


「満月⁉」


「何、満月がどうかしたの?」


 ケイが不思議そうに聞く。アレンがケイに向かって話す。


「俺たちが月の花を手に入れたのがちょうど満月だった。あれから数日経ってるのにまだ満月なのはおかしい」


「え……じゃあ、つまりどういうこと? 今、私たちはどこにいるわけ?」


「あ! 星もないよ? こんなに晴れてるのに変だよ」


 ティムが言った。ブラッドが周囲を見渡しながら話し出す。


「これで全ての違和感が繋がった。動物がカラス一羽なのも、ずっと感じていた視線も、進んでいないような感覚も、星がないのも、不自然な満月も、この空間全てが何者かによって作られたところだからだ。山に入ったときから俺たちは敵の手の中だったってことだな」


「ど、どうしよう……」


 ティムが不安そうに言った。そのとき、周囲に次々とライトが点灯する。まぶしさで目を閉じる4人だったが、少しずつ目を開く。すると、今まで岩だらけの山道だったはずが、美しいバラの咲く庭園の真ん中に立っていた。ケイは驚いて周囲を見渡す。ブラッドは鋭い目つきで周囲を警戒する。4人の前方には大きな城が建っており、城の扉がゆっくりと開いた。


「入れということか……」


 ブラッドがつぶやく。


「罠かなあ?」


 ティムが不安そうに言う。


「わからない。でも、行くしかない。みんな行くよ」


 アレンがフルーツバスケットをぎゅっと持ち直して歩き出す。皆も後をついて行く。



 城の中へと入ったが誰もいない。アレンが周囲を見渡しながら言う。


「失礼しまーす……」


 すると、広間の扉が音を立てて開いた。アレンたちは顔を見合わせて、ゆっくりと広間に入って行く。4人が広間に入った途端、扉が勝手に閉まり開かなくなった。広間の中央には、木製の頑丈そうな椅子が4つ横一列に等間隔で置かれている。アレンたちが椅子の近くまで来ると、キャットウォークからブロンズのロングヘア―の女が姿を見せた。女は微笑みを浮かべて4人を見下ろして声をかける。


「いらっしゃい。荷物を全て椅子の横のかごに置いて、椅子に腰かけて」


 アレンたちは言われるままに剣や銃をかごに入れる。


「あの、これよかったら食べてください。ミザールの市場で買った果物です」


 アレンはそう言って、かごの隣にフルーツバスケットを置いた。


「ありがとう、優しいのね」


 女は微笑んで言った。4人は顔を見合わせながら、恐る恐る椅子に腰を下ろした。全員が座ると同時に椅子から鉄の錠が飛び出し、手足を固定されてしまう。4人は驚き、外そうと動かすが外すことはできなかった。女はそれを確認してキャットウォークから降りてくる。女はフルーツバスケットを手に取って言う。


「まあ、すてきな贈り物。こんなのもらったの初めてよ。ありがとう」


「い、いえ。あ、あの、これは……」


 アレンが恐る恐る聞く。女は笑顔で答える。


「身の安全は自分で守らないとね。誰も守ってくれないから」


 アレンが慌てて言う。


「危害を加えるつもりはないんです。少しお願いがあって伺わせてもらったんです」


「そうなの……」


 女はそう言いながら、ティムとケイの前を通り過ぎ、ブラッドの前で立ち止まる。


「何だ」


 ブラッドが女を見上げて言う。女は黙ってブラッドのベストのチャックを下ろした。すると、ベストの内ポケットにダイナマイトが3つ入っていた。女はダイナマイトを取り出して、アレンに見せながら言う。


「これでも?」

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