40.ダイナマイトかフルーツか
ティムが気乗りしない様子で言う。
「うーん……。いくらドラゴンだからってダイナマイトで吹っ飛ばしちゃうのは嫌だな」
「そんなこと言ってる場合か。やらなきゃやられる」
ブラッドが冷たく言った。ティムが不満そうな顔をする。ケイがティムを見て言う。
「あんたそんなんじゃ死ぬよ? そんな覚悟でよくここまで来れたよね。全滅したらアイリス助けられないんじゃないの?」
黙って聞いていたアレンが口を開いた。
「いや、ティムの視点は大事だよ。俺もどうやって倒そうって考えてたけど、ドラゴンは魔女のペットって言ってたし、怪我させたり殺したりなんかしたら怒らせちゃうんじゃないかな」
ティムの表情が晴れやかになり、ブラッドとケイを見て言う。
「そうだよね。魔女を怒らせたら、金色の果実がもらえなくなるかも」
「じゃあ、どうすんの?」
ケイが言った。アレンが少し考えてから言う。
「手土産もって行く?」
ブラッドが眉をひそめて言う。
「何言ってんだおまえ。親戚のババアに会いに行くんじゃないんだぞ」
「わかってるよ。でも果実は魔女が大切に育ててるものだよ? それを譲ってもらうんだからそれなりに何か必要かなって」
アレンがそう言うと、ティムが笑顔で同意する。
「僕はありだと思う!」
ケイが腕を組んで言う。
「面白い案ではある。一か八かだけどね」
「じゃあ、多数決で決まり!」
ティムがそう言って手を叩いた。
「勝手にしろ」
ブラッドはそう言って立ち上がり、部屋を出て行った。
「あらら、怒っちゃった」
ケイが言った。
「大丈夫。意見が合わないとよくああなるの。でもしばらくしたら帰って来るから」
ティムが言った。
部屋を出たブラッドは当てもなく街を歩いていた。しばらく歩くと商店が並ぶ通りに着いた。何も買わずにただ歩いていたとき、フルーツバスケットがふと目に止まった。ブラッドは目を逸らして立ち去ろうとするが、結局引き返してフルーツバスケットを購入した。その帰り道、ある店がまたもブラッドの目を引き付けた。ブラッドはフルーツバスケットにちらっと視線を落とし、少し見つめてから店へと入っていった。
その頃、アレンたちはリリーの手伝いをしていた。リリーは忙しそうに夕食の準備をしている。アレンたちはテーブルに食器を並べ、できあがった料理を運びながら話をしている。
「あいつどこ行ったんだよ。もうすぐ夕食だってのにさ」
ケイが言った。
「家の周辺探してみたけどいないみたい」
ティムがアレンに言う。アレンが悩んでいると、ブラッドが帰ってくる。ブラッドがフルーツバスケットを持ち上げて言う。
「手土産、買ってきたぞ。持って行くんだろ」
アレンたちは顔を見合わせ微笑んだ。そしてそれぞれ席につき、夕食を食べはじめた。リリーがアレンに話しかける。
「明日、アルカイド山に向かわれるのですよね?」
「はい、その予定です」
「アルカイド山は岩山です。馬をつれて行くのは不便だと思います」
「そうなんですか?」
商人の男が話に割り込む。
「うちの小屋に置いて行かれたらどうですか? みなさんが帰ってくるまでしっかりとお世話させていただきますよ」
「お任せください」
リリーも笑顔で言った。
「ありがとうございます。では、お願いします」
アレンはそう言って頭を下げた。
「やめてください。あなた方は命の恩人です。私にできることなら何でも協力させてほしいのです」
商人の男が言った。そうしてアレンたちは食事を終え、部屋に戻って眠りについた。皆が寝静まった頃、アレンはそっと目を覚まし、部屋の壁に立てかけた剣を手に取り、そっと抱きしめるのだった。
森に取り残されたクレイグは、足の骨が折れて歩けなかったが生きていた。頭から血が流れ、服はところどころ破れ、土や泥で汚れている。岩壁にもたれて静かに夜が明けるのを待っていた。そのとき右手に冷たい何かが触れた。クレイグは思わず手を振り払い、右を見ると毒蛇が威嚇しながら近づいてくる。
「マジかよ……最悪。この森はどうしても俺を殺してえみたいだな」
クレイグは近くにある木の枝をつかみ、蛇を追い払おうと振り回す。しかし、蛇は逃げるどころかますます興奮して攻撃的になってしまった。そしてついにクレイグの右手に噛みついた。
「いって!」
クレイグは蛇の頭をつかみ、引き離して力いっぱい遠くへと放り投げた。蛇はどこかへ飛んでいき見えなくなった。クレイグは右手を押さえ、毒をしぼりだそうとする。しかし、だんだんと右手がしびれてきて息が上がる。
「くそっ……」
意識が朦朧とする中、クレイグは思い出したようにポケットから小さな袋を取り出す。震える手で袋を開け、中に入っている黒い粒を取り出して口へと運んだ。そしてクレイグは意識を失った。クレイグの左手から小袋が落ち、中の黒い粒がいくつかこぼれ出た。




