39.魔女の伝説
商人の男が話し出す。
「アルカイド山の山頂には昔から魔女が住んでいると言われています。魔女はペットとしてドラゴンを飼い、城を守っていると。そして森で遭難した者をドラゴンのエサにし、妖力で育てた金色の果実を食べて永遠の命を得て生き続けている。そんな童話のような話ですよ」
4人は真剣な眼差しで話を聞き、ブラッドが地図を広げた。
「アルカイド山、ここならシビルが印をつけた地域内だ」
ブラッドはそう言って地図を指さす。皆も地図に目を向けて確認した。そしてティムが商人の男に向けて礼を言う。
「ありがとう、おじさん。これで目的地がはっきりしたよ」
商人の男は慌てて止める。
「アルカイド山に行くつもりですか⁉ やめた方がいい。地元の人間も不気味がって近づかない場所ですよ⁉」
「私たちがただの噂か確認してきてやるよ。任せな」
ケイが明るい口調で言った。商人の男はため息をついて言う。
「命知らずな方々ですね……」
「どうしても確かめなくてはいけないんです。大切な人の命がかかっているんです」
アレンがそう言うと、商人の男が真剣な眼差しでアレンを見つめて言う。
「わかりました。何かよほどの事情があるのですね。でしたら彼の捜索は私たちに任せてください。責任をもって捜します。皆さんは疲れが取れ次第、出発なさってください」
「いいのか?」
ブラッドが言った。
「もちろんです」
商人の男は笑顔で答える。
「でも……」
アレンは躊躇していた。見かねたブラッドがアレンに言う。
「捜索に何日かかるかわからない。アイリスをいつまで待たせるつもりだ? あと一つなんだぞ。誰かがやってくれることより、俺たちにしかできないことをするべきじゃないのか?」
「そうですよ。任せてください」
商人の男がそう言って微笑んでいる。ティムもケイも頷いている。アレンは皆の顔を見回して決心する。
「そうだね。では、よろしくお願いします」
アレンがそう言って頭を下げる。ブラッドは鞄から薬の小瓶を取り出して、商人の男に渡しながら言う。
「もし俺たちが戻る前にクレイグを見つけて、怪我してたらこれを飲ませてやってくれ」
商人の男は小瓶を見ながら言う。
「これは……薬ですか?」
「ああ、頼んだぞ」
「はい、必ず」
商人の男は笑顔で薬の小瓶を受け取り、大事そうに両手で持った。そして話を続ける。
「ところで今夜の宿はお決まりですか? よろしければ手狭ではありますが、うちにお泊りになりませんか? 娘もお礼がしたいと言っていたんですよ」
「まだですけど、そんな何から何までお世話になるわけには……」
アレンが言った。
「そんな遠慮なさらないでください。さあさ、家まで案内いたします」
商人の男はそう言って、アレンの荷物を抱えて店の外へと誘導するように歩き出した。4人は立ち上がりついて行くのだった。
しばらく歩くと、平屋の前で商人の男が立ち止まる。
「ここです。お馬さんたちはあちらに小屋があるので、そちらにお願いします」
そう言って、家の中へと入っていった。アレンたちは馬を小屋までつれて行く。ティムが馬を小屋に入れながら話し出した。
「泊まるところ見つかってよかったね。親切な人だよね。申し訳ない気持ちになっちゃった。アレンが助けるって言わなかったらきっと見捨ててたと思うし、ぞっとしちゃった」
「俺だってそうだよ……」
そう言ってアレンが話始める。
「クレイグが行方不明になって、俺が助けたいって言ったからって一瞬でも考えた。でもそれって怖いことだよ。反省した」
ケイがアレンの肩を軽く叩いて言う。
「あんたってほんと素直だね。人は誰だって他人と友人なら友人を助けたくなるって。当然だよ」
「そうだよ。僕なんてあの商人さんが親切だから後悔してるのかもって思うよ。自分に利益をもたらしてくれるから、助けるべきだったって後悔してる僕ってやばくない⁉ 僕こそ反省しなきゃ」
ティムが言った。
「ほら、行くぞ。あまり長いと不審がられるぞ」
ブラッドがそう言って玄関の方へと歩き出した。ケイがブラッドを横目で見て言う。
「あんたこそ反省すべきだと思うけどね。能天気な奴とか酷いこと言ったくせに」
「事実だろ」
ブラッドは振り返ることなく歩いて行った。アレンとティムもその後を追い、ケイは呆れた様子でついて行った。
玄関先で、商人の娘らしき女性が立っていた。
「はじめまして、娘のリリーです。父を助けていただきありがとうございました。どうぞ、中へ入ってください」
アレンたちはリリーについて中へと入っていく。6畳分くらいの小さな部屋に布団が3つたたんで置かれている。
「男性の方たちはこちらで、女性の方は私と同じでもよろしいですか?」
リリーがそう言ってケイを見る。
「いや、ここに一緒でいいよ」
「わかりました。では、お布団は後ほどお持ちしますので、夕食までゆっくり休んでください」
リリーはそう言って、軽く会釈して部屋を後にした。アレンたちは部屋の隅に荷物を置き、床に腰を下ろした。
「ところでさっきの薬はどうしたの?」
ティムがブラッドに尋ねる。
「シビルにもらった」
「え⁉ シビルに会ったの?」
ティムが驚く。
「冒険には回復薬がいるだろって届けにきた。あれが最後の一つだからもう無いけどな」
「そっか、それでブラッドも回復したんだね。よかった」
「それよりドラゴンの攻略法を考えた方がいいんじゃないのか?」
ブラッドが話を変える。アレンも頷いて言う。
「そうだね。本当にいるとしたらかなり危険だよね」
「一番いいのは遭遇しないことだね。僕らの力じゃ何もできないと思う」
ティムがそう言って、ケイも同調する。
「遭遇したら逃げる。無理なら死を覚悟するってことだね」
「ダイナマイトはどうだ?」
ブラッドが言った。
「なるほどね! 今の装備では無理でも爆弾ならいけんじゃない?」
ケイが頷く。




