表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四銃士  作者: 黄坂美々
26/45

26.シビルの秘薬

 シビルは話を続ける。


「私、アイリスに会ってきたの。可愛らしい子ね。あなたがここで無理したらあの子に会えなくなるし、あの子が泣くことにもなるわ。そのこともよく考えるべきね」


 ブラッドが鋭い眼差しでシビルを見て言う。


「ケイを見殺しにしろってことか?」


「まあ、私はケイに思い入れがないからどっちでもいいわ。アイリスが目覚めて、話せるならそれでいい」


「おまえみたいな冷たい奴、アイリスが目覚めても嫌われるだけだ」


「そう? 意外⁉ てっきりどんな人でも受け入れてくれる子だと思ったわ」


「寝てるだけの奴見てよく思えたな」


「だってあなたでも友達なんでしょ?」


 ブラッドは言葉を吞み、目を逸らした。


「冗談よ。あなたは強がりなだけで本当は優しいんでしょうね。だからこんなに怪我して」


 シビルはブラッドの頭を撫でる。


「やめろ」


 ブラッドはシビルの手を払って言う。


「ほら、包帯換えるからじっとして」


 シビルは血で汚れた包帯を取り、新しいのを巻き付ける。ブラッドは不機嫌な表情を浮かべながらも大人しくしている。包帯を取り換え終わり、シビルはベッドを整えて言う。


「ブラッドもちゃんと休むのよ」


「ああ」


 シビルはベッドに横になり眠りにつく。ブラッドはソファに置かれたシビルの荷物をじっと見つめる。



 翌朝、シビルが目を覚ますとテーブルの上に小さな空の小瓶があった。ブラッドは静かにソファで眠っている。それを見てシビルはため息をつき、ブラッドの包帯を取る。すると昨日はあったはずの傷がすべてきれいになくなっていた。シビルはキッチンに行き、コーヒーを淹れてブラッドを見ながらゆっくりとコーヒーを飲むのだった。しばらく経ってブラッドが目を覚ます。ブラッドは勢いよく起き上がり、自分の体を見る。


「傷が、ない……」


 シビルは黙ってブラッドを見つめている。ブラッドはシビルの視線に気づいて、気まずそうに言う。


「悪かった」


「危ないことするわね。飲み薬じゃなかったらどうするの」


「それは……考えてなかった」


「まあ、無事だったからいいけど。たぶんあなたなら勝手に飲むと思ってたわ」


「盗られるのわかってて、わざとここに荷物置いて寝たのか?」


「持ち逃げはしないだろうし、飲んだら8時間は眠り続けるから逃げられる心配はないと思ってね」


「8時間も寝てたのか」


 ブラッドは窓の外を見る。


「やっぱり行くつもり?」


 シビルが聞く。


「ああ、間に合えばいいけどな」


「そう。仕方ない、私も一緒に行くわ」


「必要ない。邪魔だ」


「ひどいわあ。まあいいけど。勝手について行くだけだから気にしないで」


「おまえもか。勝手な奴ばっかりだな」


「迷惑はかけないわ。安心して」


「だめだって言ってるだろ。おまえが死んだら誰が薬作るんだよ」


 シビルは笑顔でブラッドを見つめる。


「笑ってごまかそうとするな」


「じゃ、準備して。私はいつでもいいわよ」


「全然話噛み合わないな。勝手にしろ」


 ブラッドはソファから立ち上がり準備を始めるのだった。



 少年の家を探して砂漠を駆けているアレンたちだったが、だんだん日没が近づいていた。クレイグがアレンに声をかける。


「おい! だいぶ走ってるけど大丈夫か?」


「もう日も暮れそうだよ」


 ティムも心配そうに言う。そのとき、アレンが前方に集落を見つける。


「見て!」


 アレンが指さして言う。クレイグたちが前方に目をやったとき、少年が笑顔で叫ぶ。


「あったあ!」


 アレンは少年を見て微笑み、クレイグたちもほっとした表情を浮かべる。

 集落に着いたアレンたちは馬を降り、周囲を見渡した。いくつかのゲルと中央には焚火があり、焚火の周りには5、6人の住人たちが集まっている。少年が笑顔で住民たちの方へと走り出した。


「ママ!」


 少年の声で住人たちが振り返る。そして一人の女が少年に駆け寄り、涙を浮かべて強く抱きしめる。その様子を見てティムがつぶやく。


「よかったね」


 そして少年の母と少年が手をつないでアレンたちに近づいてくる。


「あの、助けていただいてありがとうございました」


「無事にたどり着けたのは彼のおかげです」


 アレンが少年を見て言う。


「ありがとう、お兄ちゃん」


 少年がアレンを見上げて笑顔で言う。


「もうじき日が暮れます。よろしければ一晩泊まって行きませんか?」


 女の提案を聞いたティムがすぐさま反応する。


「いいの⁉ 泊まる! 宿もないし、外には恐竜いるし、困ってたんだ」


「どうぞ、ゆっくりして行ってくださいね」


 女は優しく微笑んで言う。


「すみません。ありがとうございます」


 アレンが礼を言う。


「よかった、よかった。これから寝るとこ探すのきついと思ってたんだよ」


 クレイグがつぶやく。


「あ、あの、ご主人のことなんですが――」


 アレンが話そうとしたのを遮るように女が言う。


「いいの。わかってます。息子を助けてくださって感謝してます。どうぞ、荷物を下ろしてくつろいでください」


 女は涙をこらえて、アレンたちをゲルの中へと案内するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ