17.馬賊登場
そして翌朝、5人が食堂にやってくる。豪華な食事がテーブルいっぱいに並べてある。席につきながらクレイグが言う。
「えらく豪華な朝食だな」
「きっとまだ諦めてないんだね……」
ティムがブラッドを横目で見ながら言う。ブラッドは静かに食べ始める。
「だから私が代わりに出てやるってば」
ケイが女将に言うと、女将が笑顔で答える。
「何言ってんだい。あんたたち聞いてないのかい? ブラッドは出てくれるんだよ?」
ティムとクレイグとケイが声を上げて驚きブラッドを見る。ブラッドは黙々と食べている。アレンが静かにブラッドを見つめていると、ティムがアレンを見て言う。
「もしかしてアレン知ってた?」
アレンは微笑みでごまかす。クレイグがブラッドを見て言う。
「あんなに頑なだったくせに」
ケイは笑顔でブラッドに言う。
「やるじゃん! 見直したよ」
「おまえらがグダグダうるさそうだからな。その代わり、女将にも言ったがこれ以上は何もしないし、おまえらもするな。これが終わったら即この村を出る」
女将がブラッドの手を握りながら言う。
「それで十分だよ、ありがとう。この恩は一生忘れないよ」
ブラッドが嫌そうに手を引き離すと、女将が思い出したように話し出す。
「そうだ! 大事なこと言い忘れてたよ。決闘はこの村の者じゃないといけないんだ。だからあんたは私の息子ってことで頼むよ」
ブラッドは眉をひそめて言う。
「はあ? そんな決まりあるなら先に言えよ。バレたらどうするつもりだ」
「大丈夫、大丈夫。バレないように息子と同じ黒髪のあんたに頼んだんだから」
5人は厨房にいる息子に目をやり、クレイグが女将に言う。
「髪の色だけじゃねえか!」
ティムも不安気に言う。
「バレない?」
「あまり話さないようにすればいい……かな?」
アレンが言う。
「めんどくさ……」
ブラッドがつぶやく。女将が笑顔でテーブルに食事を運びながら言う。
「まあ、何とかなるさ! 今はたくさん食べて力つけとくれ!」
息子が厨房の中からブラッドを心配そうに見つめている。
街の広場に多くの人々が集まっている。広場の中央には金網で囲まれたリングが設置されている。ブラッドはリングの上で静かに座っている。リングのそばで女将がブラッドの様子を心配そうに見つめている。アレンたちは女将から少し離れたところで女将の息子と共に見守っている。ケイは女だとバレないように頭からローブを被り、ティムたちの陰に隠れている。女将の息子がアレンに聞く。
「そう言えば君たちの旅の目的は何なんだ?」
「女神の雫を探してるんです。何か知りませんか?」
「ん? それどっかで聞いたな……」
「どこでだ⁉」
クレイグが聞く。息子は腕を組み考え込む。その様子をアレンとティムが静かに見つめる。
「たしか……そうだ! 月の花のことじゃないかな」
「月の花?」
アレンが不思議そうにしていると、息子が話を続ける。
「珍しい花でね。水もない砂漠の一帯に突然咲き、そして一夜にして消えてしまう」
ティムが不安そうに言う。
「そんな珍しい花、この広い砂漠でどうやって見つければいいんだろ……」
「月の花は満月の日にだけ現れる。地図はあるかい? 僕が一度だけ見た場所を教えるよ」
アレンが地図を広げ、息子が地図を指さして説明していると、背後から聞き覚えのある声がした。
「あら、クレイグじゃない?」
クレイグが振り返ると、そこにはレナと団長の男と数人の踊り子たちが立っていた。
「この前の」
クレイグが言うと、レナがにっこりと笑って言う。
「やっぱりまた会えたわね」
団長の男が周囲を見渡して言う。
「これは何の騒ぎですか?」
一人の踊り子がリングを指さして言う。
「あ、団長見て! リングの上。ブラッドじゃない?」
「ほんとだ。これから祭りでも始まるんですか?」
クレイグが険しい表情で言う。
「そんなんじゃねえ。決闘だ。危ないからおまえらは隠れてろ」
踊り子たちは不安そうにひそひそと話し出す。そのとき、遠くから蹄の音が聞こえてくる。
「来た! 隠れろ!」
踊り子たちは身をかがめ、クレイグは踊り子たちを隠すように立つ。5人の馬賊の男が馬や馬車に乗ってやってくる。人々は道を開け、馬賊はリングの前で馬を止める。馬車から大柄で髭面の男が降りてきて、無数の釘が刺さったバットを持っている。あとは頭にバンダナを巻いた男が二人と、バンダナで口元を覆うように隠している男が二人いる。大柄の男がリングを見て言う。
「準備はできているようだな」
賊の男たちは卑しい笑みを浮かべて口々にブラッドに向かって話し出す。
「いい子だな⁉ 自らリングに入るとは」
「リングに引きずり上げる用意してきたのにつまんねえなあ」
ブラッドは黙ってただ男たちを見つめている。大柄の男がうつむいている女将に近づき、顔を覗き込むようにして話しかける。
「今日はたしか、女将のところの息子だったな」
「や、約束だからね。うちの息子が勝ったらもうこの街には来ないでおくれよ」
大柄の男が卑しい笑みを浮かべて女将の肩をなだめるように軽く叩く。女将が小さく震えながら男たちを見ていたとき、どこかから小石が飛んできて大柄の男の頭に当たる。
「いてっ。誰だあ? 今、石投げた奴あ?」
大柄の男が周囲を見渡しながら言い、賊の男たちも鋭い視線で周囲を見渡す。




