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四銃士  作者: 黄坂美々
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16.スケープゴート

 ブラッドは何事もなかったように脱衣所で荷物を棚に置いている。そこへ3人がバタバタと入ってくる。


「あれはないよ!」


 ティムが言う。続けてアレンも話し出す。


「泊めてくれたのに聞きもしないなんて」


 クレイグが荷物を置きながら、ブラッドに言う。


「まあ、おまえらしいけどな。女将も見る目ないよな。よりによってこいつに頼み事って」


「面倒事はごめんだ。聞いたところでどうせ断るなら聞くだけ無駄だろ」


 ブラッドがそう言って上着を脱いだとき、ケイが女将を連れて脱衣所に入ってくる。それを見たクレイグが慌てて言う。


「おまえ、どこまで入って来てんだよ!」


「途中で逃げるからだろ!」


 女将はブラッドの身体を見つめて言う。


「やっぱりいい体してるよ」


 ブラッドは怪訝な目で女将を見る。皆も苦笑いを浮かべて女将を見る。ケイが女将をにらみつけて言う。


「おい、あんた。体まじまじと見に来たんじゃないよね?」


 女将は慌てて話し出す。


「おっと失礼。そうじゃないんだ。あんたならこの宿……いや、街を救えそうな気がしたんだ」


 クレイグが女将に言う。


「こいつに頼んでも無駄だぜ。諦めろ」


 ティムが女将に聞く。


「救うって、やっぱり賊から?」


「そう。明日の昼、奴らが決闘をしに来るんだ。そこで勝てばもうこの街を襲撃しない約束になってる」


「そんな約束守るわけないだろ」


 ブラッドが冷たく言う。


「でも賭けるしかないんだよ。月に一度、奴らは決闘をしかけてくる。今まで何人の男が瀕死にされてきたか……」


「おそらく負けねえとわかってて、痛めつけることを楽しんでやがるな」


 クレイグが言う。それを聞いたケイが険しい顔で言う。


「私がぶっ殺してやるよ」


 女将が慌てて止める。


「何言ってんだい。あんたはだめだよ! 女は出てっちゃだめだ」


「私だってやれるよ! なめんなっての!」


 クレイグが止めに入る。


「だめだ! 俺に任せろ。この銃で一瞬で片付けてやるよ」


「こっちは素手って決まりがあってね。それにあんたはちょっと……」


「素手か……って俺じゃ不満ってどういう意味だよ!」


 クレイグが不満そうに言う。


「出場予定者はどうした」


 ブラッドが女将に聞くと、女将は黙り込んでうつむいてしまう。そこへ小太りの男がやってくる。


「母さん、もうやめろよ。迷惑だろ」


 そう言って、皆が見つめる中、男は女将の腕をつかみ連れ出そうとする。しかし女将はその手を振りほどいて潤んだ瞳で言う。


「何言ってんだい! もう時間がないんだ。この人に頼むしかないだろ!」


「この人には関係のないことだろ」


 女将と息子が目の前で言い争いをはじめたので、ブラッドが強めの口調で言う。


「いい加減風呂に入らせてくれ」


 はっとした女将と息子は急いで脱衣所から出ていき、ケイも急いでついて行く。その後4人は風呂に入る。ブラッドは黙って目を閉じて湯につかっている。3人も静かにブラッドを見つめながら入っていたが、耐えきれなくなったティムが口を開く。


「ブラッド――」


「黙れ」


「でも――」


「聞きたくない」


 ブラッドはティムの話を遮り聞こうとしない。ティムはムッとしながら黙り込む。それを見たクレイグがティムに言う。


「もうやめろ。おまえ、ブラッドに死ねって言いてえのか?」


「そうじゃないけど、ブラッドだったらもしかしたらって……」


「無茶言うなよ。いくらブラッドだって恐怖はあるんだぜ?」


 ブラッドは黙ったまま湯から上がり、風呂場を出ていく。3人は顔を見合わせる。



 ケイがロビーのソファに腰かけ、水を飲んでいる。そこへ風呂から上がったブラッドが通りかかり、ケイが声をかける。


「話聞いた。あの息子が予定者らしいよ」


「だろうな」


「息子がやられたら宿屋やってけないって嘆いてた」


「お節介な奴ら……」


 ブラッドはそう言ってケイの向かいのソファに腰を下ろした。ケイが眉をひそめて言う。


「あんたには優しさってもんがないわけ?」


 ブラッドは黙ったまま一点を見つめている。そこに3人が風呂から上がりロビーに来て、クレイグが声をかける。


「まだ部屋に戻ってなかったのかよ」


「ちょっと話があってね。でももう終わった」


 ケイはそう言って、ソファから立ち上がり二階へと上がっていく。クレイグとティムもケイについて二階へ上がるが、アレンはソファに腰かけてブラッドに話しかける。


「ちょっといい?」


「また薄情だの冷たいだの言うんだろ。もう聞き飽きた」


「あの決闘、俺が代わりに出てみようかなって」


「目的を見失うな。ここで情に流されて大ケガしたらこの先どうするんだ」


「そうだけど、このまま放っておけないよ」


 ブラッドはため息をつく。


「だから聞きたくなかったんだよ。こうなると思った」


 アレンは黙って目を逸らし、ブラッドは話を続ける。


「俺が出る。その代わり約束しろ。負けてもリベンジは無し、そのまま進め。これ以上のボランティアはするなよ」


「ブラッド……ほんとにいいの?」


「仕方ないだろ。おまえに何かあったらアイリスが悲しむ……」


「ブラッドがケガしたって悲しむよ」


「レベルが違うな」


「知ったかだな……。でも気をつけて。無事に4人で帰るんだから」


「相手がわかんない以上、その約束はできないな」


 ブラッドはそう言って立ち上がり、階段を上がって行く。アレンは静かにその後ろ姿を見つめていた。

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