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四銃士  作者: 黄坂美々
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1.水色の果実

この作品はFC2ブログにも掲載しています。


<主な登場人物>

アレン(20)赤髪の青年、 クレイグ(20)金髪の青年、 ティム(20)茶髪の青年、 

ブラッド(23)黒髪の青年、アイリス(20)金髪の女性

 田園風景の広がる小さな村ポラリス。石造りの家があり、透き通ったきれいな小川が流れている。診療所からアレンが出てくる。アレンは医学生で、村唯一の診療所の一人息子である。


「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」


 アレンは中に向かって声をかけ、手に持ったリュックサックを肩にかけ、小走りで駆け出す。笑みを浮かべ、軽やかな足どりで並木道を駆け抜ける。



 しばらくすると白い外壁の小さな家が見える。家の横には樫の木があり、ブランコが吊るされている。アレンは家のドアを軽く叩く。


「アイリスー! いるー?」


 家の中から声がする。


「入ってー」


 アレンはドアを開け、家の中へ入る。アイリスが部屋の真ん中で、背を向けて椅子に座り、キャンバスに向かっている。アイリスは売れない画家である。母親はアイリスが生まれてすぐに亡くなり、父親も数年前に他界し、今は一人暮らしをしている。アレンがアイリスに近づきながら問いかける。


「今日は何描いてるの?」


 アイリスがキャンバスを持って突然立ち上がり振り向く。


「じゃーん! 世にも珍しい水色の果実よ!」


 アイリスはキャンバスを突き出して、アレンに見せる。アレンはキャンバスを持ち、絵をじっと見つめる。


「今日は空想の絵なんだね」


「それがね、本当にあるのよね」


 アイリスが笑顔で水色の果実を見せる。アレンは驚いてまじまじと見つめる。


「この果実を見てたらまるで海を見てる気分にならない? よーく見てみて。一色じゃなくて、いろんな色が混ざり合ってるのわかる?」


「あ、ほんとだ。きれい」


「でしょ!? この前森で会ったおじいさんにもらったの。アレンに見せたくて」


 アイリスが微笑みながらアレンを見つめている。


「初めて見るよ。何て果実?」


「知らない。それより中身気にならない? 食べてみよ!」


「え……そうだね」


 アレンは戸惑いながらも話を合わせる。アイリスは水色の果実を持ってキッチンに行く。アレンは待っている間に部屋を見回していた。そのときキッチンから大きな物音がする。アレンは慌ててキッチンに行く。

 アイリスが床に倒れている。まな板の上には切りかけの果実とナイフがあり、アイリスの手元にはかじられた一片の果実が転がっている。アレンはアイリスに駆け寄り、抱きかかえる。


「アイリス! アイリス!」


 体を揺するが反応はない。


「おーい! 生きてっかー!? メシ持ってきてやったぞー」


 家の外から声がする。



 クレイグが袋を下げて家の中に入る。クレイグは猟師の息子で、後継者として日々鍛錬している。


「クレイグ!」


 キッチンの方からアレンが呼んでいる。クレイグは慌ててキッチンに向かう。


「何だ、何があった!」


 クレイグがキッチンに駆けつける。アイリスを抱えるアレンの姿を見て、クレイグは驚き持っていた袋を床に落とす。アレンは涙を浮かべてクレイグを見上げる。


「父さんを! 早く父さんを呼んできて!」


「わ、わかった!」


 クレイグは慌てて家を飛び出す。アレンは震える手でアイリスを抱きしめる。



 診察室の前の長椅子にアレンとクレイグが座っている。うつむきながらアレンが口を開く。


「どうしよう……アイリスにもしもの――」


「やめろ。悪く考えるな。大丈夫だ」


 クレイグはアレンの言葉を遮るように言った。


「やっぱり、あの果実のせいかな……」


「だろうな」


「止めればよかった。変な色だし、森で会ったおじいさんって――」


 クレイグがアレンの胸ぐらをつかむ。


「そうだよ! 何で止めねえんだよ! こうなったのはおまえのせいだぞ! 食おうとすんじゃねえよ!」


 アレンを突き放し、壁にもたれる。アレンは黙ったままうつむいている。そこにティムが来る。ティムは農家の息子で父親の手伝いをしている。動物や植物に詳しい。


「まだ診察中?」


「ああ」


 クレイグが不機嫌そうに答える。


「あの果実見てきたよ。あれはシーダイヤだと思う。別名、夢幻(むげん)の実っていって、昔は睡眠薬として使われていた果実なんだ」


「じゃあ、アイリスは眠ってるだけ?」


 アレンは笑みを浮かべてティムを見上げる。


「うん。でも――」


 診察室のドアが開き、アレンの父が出てくる。アレンとクレイグが立ち上がる。


「アレン、ティムからあの果実の話は聞いたのか?」


「うん。それでアイリスは?」


「わからん。数日で目覚めるかもしれないし、一生このまま眠り続けるかもしれない」


「え? どういうこと?」


 アレンは驚いてティムを見る。


「食べた量が多過ぎたんだ。たくさん食べるとその分眠り続ける。あの果実で自殺する人もいるみたい」


 アレンは崩れ落ちるように椅子に腰かける。


「何とかなんねえのかよ! 叩き起こせよ!」


 クレイグが診察室に入ろうとしたのをティムが慌てて引き止める。


「だめだって! あれを食べたら何しても起きない。たとえ空腹でも」


 クレイグがティムの胸ぐらをつかむ。


「寝たまま餓死ってことかよ!」


 アレンの父がクレイグの肩に手を添える。


「いや、そうはさせない。点滴で栄養補給はできる。ただ病院でできることはそこまでだ。あとは目覚めるのを願うしかない」


 クレイグは肩を落とし、アレンはうつむいて涙を流す。クレイグは壁を殴る。


「くそっ! どこのじじいだよ! 見つけたらぶっ殺してやる」


 ティムは心配そうにアレンの前に腰を下ろし、膝に手を添える。


「大丈夫だよ。きっと目覚める。僕も何か方法ないか探ってみるからさ」


 アレンは涙をぬぐい、ティムを見る。


「どうやって? 心当たりでもあるの?」


「えっと……何か知ってるかもって人はいる。その人に聞いてみようかなって」


「行く! 俺も一緒に行く!」


「誰だよ、それ」


 クレイグが疑いのまなざしでティムを見る。


「村はずれの山奥に一人で住んでる人。自称錬金術師なんだ」


「うさんくせえな。そんな奴にアイリスの命預けられるか!」


 クレイグは呆れた顔で言う。


「悪い人じゃないって。ちょっと変わり者なだけ」


「いつか目覚めるどころか、とどめ刺されたらどうすんだよ」


「そんなことしないよ!」


 ティムはクレイグをにらみつける。アレンが二人の間に割って入る。


「二人とも落ち着いてよ。話だけでも聞きに行こ。どうするかはそれから考えればいいんだから」


「そうだよ!」


 ティムがクレイグを自慢げな顔で見る。クレイグは不満そうに目を逸らした。

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