あいだ
「しかしさ、ヘアピン探してる張本人がなんで懐中電灯の一つも持ってきてないわけ?」
スマホのライトを点け、足元に注意しながらコンビニへ向かう道中。俺は気になったことを聞いてみた。こいつは懐中電灯はおろかスマホすら出そうとしない。
「自分探しに懐中電灯って必要かなあ?」
本当に探す気あるのかね、こいつ。もはやツッコむのも面倒だ。
「はいはい。自分の進むべき道を照らすには必要なんじゃねえの?」
「確かに! じゃあ取りに戻ろう!」
くるりと向きを変える奈名。さっきから思っていたが、奈名はいちいち動きが大きいのでスカートがふわふわと揺れている。見えそうで見えないというほど短くもないのだが、広がったスカートに隠れてなんだか足がないみたいに見える。
「もうそこの角曲がったらコンビニだぞ」
「えーっと……急いで取りに戻ろう」
「もういいから行くぞ」
結局見つからず、コンビニに辿り着いてしまった。俺は当初の目的通り買い物を終え、周辺を探している奈名に合流する。
「ちょっと休憩しようぜ。ほらこれ」
「あ、ハロハロ! 買ってくれたんだ、ありがとう! 憲吾は何買ったの?」
「夜食のカップ麺と、三時のおやつ」
無論、深夜の。
「もうお湯入れてるじゃん、こんなとこで食べるの?」
「深夜に路上で食うカップ麺ほどうまいもんを俺は知らないね」
コンビニの無駄に広い駐車場。車止めの一つに腰かけて俺は自前のジャンクフード論を説く。
「そうなの? 一口ちょーだい」
「太るぞ」
「じゃあハロハロで我慢するね」
「お、おう……なんかすまん」
「いただきまーす」
聞いちゃいねえ。
「はあ、ごちそうさま。……ねえ憲吾、覚えてる? 小学生の時はこうやってよく一緒に遊んだよね」
「そうだな」
「どうして学校、来なくなったの?」
「どうしてだろうな」
「はぐらかさないでよ。……もしかしてさ。私のせい、なのかなって」
「そうじゃないんだ。自分でもはっきりこれだ、って理由がわからない。怒られたり、からかわれたり、恥ずかしかったり。そんな今ではどうでもいいことが重なって、なんとなく行きたくないなって思っただけ」
「今でも学校は行きたくない?」
「……今日気付いたんだけどさ。人と話すの、思ってたより楽しかったんだな」
「憲吾、それじゃあ……」
車が通り、奈名の後ろで何かが光ったように見えた。
「ん? 何か今……」
近づいて確認する。駐車場の傍らに小さなヒマワリが咲いていた。
「おい奈名、あったぞ」
「私のヘアピン!」
駆け寄ってきた奈名に拾って差し出したが、彼女は受け取ろうとしない。
「どうした? 探してたんだろ?」
「それ、憲吾が持ってて」
「は? なんで?」
「明日、学校に渡しにきて」
「こっちは引きこもりだぞ」
「じゃあ引きこもりは昨日で卒業! 今日から学生に復帰してください」
「お前、まさかそのために……?」
「べ、別にあんたのためじゃないんだからね!」
「無理にツンデレしなくても……」
どうやらかなり心配してくれていたみたいだ。だけど、帰り道はあまり話さなかった。
「ここでいいよ。手伝ってくれてありがとう、憲吾」
俺たちはそのままほとんど話さず家の前まで戻ってきた。
「ああ。じゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみ」
門を開き、敷地内に戻ろうとしたとき、奈名が声をかける。
「憲吾」
「どうした?」
「……なんでもない」
「そうか?」
「明日、学校で」
「……ああ」
そうして俺たち幼馴染の深夜の再会は少しぎこちなく終わった。結局その後は何もする気が起きず、俺は眠った。買ったおやつは食べなかった。
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