クイーンユキ
皆より高めの位置の椅子に座るユキ。こうやって見ると始祖も減ったなあ。ハンターに狙われたって言うのもあるだろうが‥‥‥。
皆がこぞってユキに挨拶にやって来る。そっと手をとり頭を下げる。手にキスなんてさせない! 皆、俺の顔色を伺う。そんなに怖い顔してるか? 兄達も揃って並ぶ。これもある意味レアだよなあ。俺と違って兄達は人気がある。なにせ軍を動かし人間達を守る。ちょっとしたヒーロー的な? そこでマイキー兄に背中を叩かれる。毎度毎度この兄貴は‥‥‥何かとすぐ叩く。本人は至って悪気はない。ただの挨拶だと思っている。
「そーんな怖い顔するなって。皆知っているのだからな」
親指を立ててグッとのポーズ‥‥‥これだから軍人上がりは‥‥‥ちょっと鬱陶しい‥‥‥。そこでユキが椅子から立ち上がる。
「私達は不死の存在ヴァンパイア。この世界には色々な種が共存して暮らしています。そこで考えてみました。不死だからこそ出来る事は? と。不死だから出来る他種族の橋渡しや見守り‥‥‥そして、共存。見守って行こうではありませんか? 世の中が映り行くそのさまを伝えて行きましょう。種の保存、もしかしたら新しい種が生まれるかも知れません。そう思うとワクワクしませんか? 皆で考えて行きましょう」
ユキ‥‥‥そんな事を考えていたなんて‥‥‥何だろう‥‥‥感動する。ユキのオーラのせいもあるのだろうが、これがクイーンの力ってやつか。初めて会ったあの日‥‥‥ドクター有紀はカッコよかったよ。本当に‥‥‥あの短い時間が愛おしい。こんな気持ちになるなんて思ってなかったよ。今じゃあクイーンと呼ばれる存在だ。あの時リックが日本行きを後押ししてくれなかったら‥‥‥日本にそもそもトラウマがあったことさえもう忘れてしまったよ。信長の事だって今では楽しい思い出として俺の中で彼は生きているんだ。
そこに今度はあの伯父がユキに近づく‥‥‥当たり前だが皆が警戒する。
「これはクイーン。お美しい、こうやってお顔を拝見するのは‥‥‥二度目ですかね。あの小娘がここまで変わるとは、驚いたよ」
一瞬俺達は殺気立つ。
「これはクイーンに失礼を、お許し下さい」
そう言って頭を下げる伯父だった‥‥‥が! 突然ナイフでユキを襲う。
「許せるものか! 人間だった者がクイーンだなんて!」
そう叫びユキに向かう‥‥‥だが、ユキを前に動けなくなる。ユキがじっと伯父を見つめる。
「貴方の思想は私には理解出来ない。上に立っている者としての自覚がない!」
ユキ‥‥‥スゴイ迫力だ‥‥‥俺だってそのオーラに当てられている。伯父は足が竦む。
「‥‥‥悪かった。クイーンお許しを」
‥‥‥油汗をかきながら床に手ついて頭を下げる。伯父の姿があった。




