変身
あのキャメルが照れた様に笑って言う。
親父が放った使い魔逹が戻って来た。
「帰って来たか」
使い魔逹は夜の闇の中に消える。
「明日始祖逹がここに集まる。ここでクイーンのお披露目をさせてもらうぞ。疑っている始祖もいるからな。自分の目で見れば分かるだろう」
「親父。タイラー伯父も来るんだよな」
兄達の視線が親父を見る。
「当然だろう。奴も始祖だからな。問題はユキか? 状況が分かっておらんだろう。大丈夫か?」
傍で俺に支えられているユキに向かって言う。
「私はどうすればいいのでしょう?」
「何もしなくてもいい。座っていればいい。ユキ。気づいてないようだがお前さんからしっかりとクイーンのオーラは出ているぞ。そうだな、俺の血も飲むといい、きっと面白い事が起きるぞ」
親父はさっと俺からユキを離し自分の元に抱き寄せる。
「マリーは首が好きだったが、ユキは腕がいいのか? 俺は首からが好きだから構わんぞ。ほら、しっかりと飲むのだぞ」
そう言われてユキは親父の首から吸血する。ユキは旨そうに飲んでいる。俺以外からの始祖の血は飲んでいない‥‥‥兄達にさっき吸血していたが‥‥‥これから何か起きるのか。ユキは満足そうに顔を上げる‥‥‥。ユキからのオーラが変わった! 俺にも分かる‥‥‥これは‥‥‥上位の存在から受けるオーラだ。ユキ‥‥‥‥‥‥間違いなく君はクイーンだ。そこでライザが嬉しそうに言う。
「これからは私の出番ね! しっかりクイーンの衣装を用意しないと! うふっ! 嬉しいわあー! どんなデザインにしようかしらー!」
とウキウキだ。
「今から作るのか?」
俺は思わず言ってしまった。
「あのね。何十年もやっているのよ。それに優秀な眷属もいるし、今夜にでも作れるわよ」
少し膨れるライザに眷属達が宥める。
「悪かったよ。ライザ。ユキをまた綺麗にしてくれ」
「もちろんよー! 任せなさい! ユキのサイズは覚えているからね」
と、俺にウインクする。問題はユキのメンタルか~‥‥‥いきなり自分がトップだと言われてもなあ、
「それでは、明日この場に!」
と、親父は部屋を出て行く。俺達も部屋を出るか。ユキと和也と三人で部屋を出た。
「ユキ様。大丈夫ですか?」
和也がユキを気遣う。
「そうね‥‥‥頭の中がパニックよ。でも、私は他とは違うのね‥‥‥私はどうしたらいいの?」
俺に縋っていうユキに
「君は何もしなくてもいいんだよ。君の存在自体が奇跡なのだから。気にしなくていいんだ」
ユキは俺の言葉に何度も頷いた。




