クイーン
親父の言葉に皆が驚く。意味が分からない。ユキとどういう関係があるんだ。
「ユキの血族の何処かにヴァンパイアがいたのだろう、それも強いヴァンパイアがな」
「‥‥‥それって‥‥‥」
一同が親父の言葉を待つ。
「‥‥‥先祖返りだ。マルクの血によってきっとそれが目覚めたのだろう」
皆驚きを隠せない。親父は続けて言う
「「ユキはヴァンパイアのクイーンだ。始祖の祖だよ」」
誰も声が出ない。始祖の祖って初代ヴァンパイアって事だよな。俺は理解できない頭で親父に聞く
「ユキがクイーンだと言う根拠は」
「クイーンの存在は我等の文献書物からも明らかだ。クイーンは始祖の血を好んで飲む。始祖。そうだ、自分の子供達だよ。きっとその中に人間とのハーフもいただろう。クイーンの力は強い人間とのハーフでもその子供はヴァンパイアだったのだろう」
「クイーンに噛まれた人間は快楽の中毒にはならない。そう記してあった。なのでクイーンは人間の間で長く生きた。と書かれてあった」
えっ? ヴァンパイアの祖は不死ではないのか?
「不思議だろう? 我々は不死だ。クイーンはヴァンパイアに似た何かと人間のハーフだったのかも知れん。クイーンは今の俺達ヴァンパイアの始まりの存在だったのだから。長い年月の結果、我々のような今のヴァンパイアとなったのだろうな」
「親父逹始祖は‥‥‥元々兄弟なのか?」
「そうなのかもな。クイーンは沢山の子供達を残したそうだ」
だから始祖の家系は多いのか‥‥‥タイラー伯父さんのシスコンの理由が何となく分かった気がした。
そこでユキがふらつく‥‥‥俺が支える。
「私‥‥‥‥‥‥」
俺の腕を掴んだその手に力が入る。ユキも困惑している。そうだよな。俺達だって驚いているのだ、本人はもっと混乱しているだろう。
「これからどうするんだ。親父」
親父はふっと笑うと立ち上がって
「クイーンの復活だぞ! 皆に知らせないといかんだろう?」
大きな声で笑った後
「これで、タイラーも何も出来なくなる。クイーンの命令は絶対だからなあ」
親父は沢山の使い魔を呼び出す。それらにメッセージを渡し飛ばす。
俺は支えたユキの姿が気になり
「ユキ。髪はいつ染めた? 染めた髪には見えないが‥‥‥」
「そう言えば、私髪を染めていない‥‥‥」
そこでキャメルがユキに近づき
「俺も噛んでくれあんたの牙の味が知りたい」
そう言って腕を出す。ユキはキャメルを吸血する。
「これは!」
キャメルも叫ぶ。
「成る程。こんな感覚は初めてだ。クイーンか、いいんじゃないか」
厳ついキャメルが嬉しそうにユキを見る。




