マリッジリング
「義父様! 本日はありがとうございました!」
ユキは胸に手を当てて会釈をする。それを見た親父はまたユキの匂いを嗅ぐ。
「ふーん。マルクの匂いがする。‥‥‥だが、それだけじゃない。マルクよ、何かあったら俺に連絡するように」
そう言って無表情で使い魔のフクロウを俺に渡す。フクロウって‥‥‥いつの時代だよ‥‥‥。他の使い魔もいるだろうに‥‥‥。
「そんなに分かりやすく嫌な顔をしなくてもいいだろうよ。マルク」
そう言って笑う。
「さあ。マルクス様。ユキ様。日本に帰りましょう」
そう和也が言う。ユキは兄達にも会釈をして挨拶する。
帰りのジェット機の中モニターでテレビを見る。どこもライザの事で盛り上がっていた。チラっと見えたライザの顔の一部からAIを使ってその顔をモニタージュしたりと話題には事足りていないようで‥‥‥謎だから皆興味があるのだろう、だが‥‥‥ライザの顔を知っているモデル逹やパタンナーもいる。なのでインタビューを受けているスタッフも多くいた。だが皆何も言わない。それだけライザには人を惹きつけるものを持っているのだろうな。今のライザは何代目? かとか聞いていたな。笑える。テレビを見ながらユキ逹と笑う。
「さあ。日本に戻るぞ。仕事も待っているからな。ユキはどうする? ドクターとしてやっていきたいと言うのであれば和也が何とかしてくれるぞ」
「そうね。でも、もう少しマルクの傍でゆっくりしたいわ。マルクが帰ってくるのを待つのって新婚家庭みたいで楽しいもの!」
そこで和也が何やら箱を出す。
「ライザ様からの贈り物です」
箱を開けると‥‥‥指輪が二つ‥‥‥これって‥‥‥
「マリッジリングですよ。ライザ様ブランドの」
「あいつこんなのも作っているのか?」
「はい! 数は少ない貴重な物ですよ。ライザ様はアクセサリーは余り手掛けないのです。だから、高値がついていますよ」
俺はその指輪をユキの指にはめる。ユキは嬉しそうに俺を見つめてその目は潤んでいる。そして指のリングをその後ずっと見つめている。そんなユキの姿を見て俺は思う。
俺の兄達はスゴイなあと思ったここ最近の出来事だった。
日本か! 戻ったら絶対にメイドカフェに行くんだ! 俺の顔を見てユキも笑う。
♢♢
日本に戻って来てユキはまだ興奮している。テレビでも相変わらずライザの特番だらけだ。ユキは指輪を大事そうに時々触っている。こんなに喜ぶのなら他にも何か買ってプレゼントすれば良かったな。これだからリックから女心が分からない! と言われてしまうのだ。
「そんなにリングが嬉しいのか? ずっと触っている」
そう言うと
「もちろん! 凄く嬉しいわよ! ライザさんからのプレゼントって事もあるけど‥‥‥私の事を皆さんが受け入れてくれた事が何より嬉しいの」
「そうか。俺も嬉しいよ、俺にはユキ。お前が居てくれれば何もいらない」




