マリッジセレモニー
バックステージに戻るとユキが、ライザに
「‥‥‥ありがとうございます。こんなに素敵なドレスを着る事が出来るなんて思わなかったです‥‥‥本当に嬉しい」
ユキはポロポロと涙を流す。
「ユキ。それは貴方の物よ。貴方の為に私が作ったのだから、遠慮しないで持って行ってね」
その言葉にユキは涙が止まらない。
「ユキ。せっかく綺麗にメイクしたのに‥‥‥? 落ちてない!」
驚く俺を冷ややかな目で見るライザ。
「いやねえ~もう。ユキがうれし泣きするって分かっていたもの、落ちないメイクをしてあるのよ。うふ。私ってスゴイでしょう?」
傍にいる眷属が貰い泣きしながら小さく拍手をする。ああーそれ、流石ライザ様ってやつか‥‥‥。それにしても会場はずっと拍手と歓声が鳴りやまない。ショーの最後にウエディングドレスが登場する事は良くあるが、まるで結婚式のような演出だった。
「これは貴方達の結婚式よ。そのつもりで準備してきたの」
ライザが驚く事を言う。
「さあ! これからが本番よ! 皆! 連れて行っちゃって!」
俺達はライザの眷属に連れて行かれる。そこには小さなウエディングチャペルが用意されていた。そこには、俺達の兄、親父‥‥‥そして、有紀の両親が居た。きっと思考を操ってここに連れて来たのだろう。ユキの姿も有紀に見えているはずだ。ユキは両親と抱きしめ合う。
「ここまで育ててくれてありがとうございます。パパ。ママ。私は幸せです」
チャペルの鐘が鳴る。沢山の花が俺達を祝福してくれている。俺はユキの両親に
「幸せにします。有紀をこの世に生み育ててくれて感謝します!」
そう言ってユキの両親の肩を抱いた。そして俺は手を叩き二人の記憶を消した。倒れた二人はライザの眷属が元のクルーズ船に戻すだろう。
「‥‥‥私。何て言っていいか‥‥‥わからないわ‥‥‥マルク。貴方の家族って本当に素敵だわ!」
俺の首にしがみ付くユキ
「俺達は何百年と一緒にいる。喧嘩もしたが、家族っていいよな。ユキの嬉しそうな顔が見られて俺は満足だ」
親父が空を見上げてぼそっと言う。
「マリーにも着せてやれば良かったかなあ」
親父の気持ちも分かるから‥‥‥何ともなあ。仲の良い二人だったから、きっと親父は少し後悔しているのかも知れない。だが、母マリーはそんな事は思っていないだろう。はっきりとものを言う性格だから、して欲しかったら自分で言っているだろう。
「今日は一段とお美しい」
普段の恰好の和也がいつの間にか居た。
「おまえ! いつの間に!」
「初めから居ましたよ。良かったですね。ユキ様。私も嬉しいです」
「和也くんのモデル姿もカッコよかったよ~」
ユキの言葉に照れる和也。




