二日酔い
俺は目が覚めた。頭が痛い、そうだった。俺は酒で潰れたんだっけ。そして有紀に介抱してもらい‥‥‥。何故? 有紀が隣でそれも同じベッドで寝ているんだ? ダメだ‥‥‥まったく思い出せない‥‥‥。
「マルク起きたの?」
眠そうに目を開ける有紀。わわわわわ! どうしたらいい! 俺は!
「有紀。どうしてここで寝ているのかな?」
「あら、夜の事忘れちゃったの?」
「夜‥‥‥ですか‥‥‥」
「! 有紀! 俺、有紀の事噛んでないか!」
「噛む? 何よそれ」
と笑っている。良かった。吸血はしてないようだ。まずほっとした。だが、この状況をどうする。
「私がシャワーから出たら貴方はこのベッドで爆睡していたわ。このベッドってクイーンサイズでしょう? だから、私もここにお邪魔させてもらったの」
そうかそれなら問題ないな。ああ自分が酒臭い。それに酷く頭が痛い。二日酔いだな。
「有紀。俺シャワーしてくるからその間に着替えて出て行ってもいいぞ。昨日は、ほんと悪かった。この埋め合わせは必ずするから!」
俺はそう言ってシャワーを浴びた。ダメだなあ。調子が狂う。だが、有紀の笑顔が見れたのは嬉しいな。‥‥‥? 何だこの感情は‥‥‥。
まずいなあ。俺は有紀の事が気になっている。相手は人間だぞ! そう自分に言い聞かせる。今日も仕事があるんだ。しっかりしないと行けない! 自分の頬を手で挟むように叩く。パンパン。良し。とシャワーから出ると有紀は居なかった。良かった。俺も用意して行かないと、ふとテーブルに目をやると朝食の用意がされてあるではないか。テーブルに置かれたメモには『しっかり食べて下さい。昨日のお礼です』はあ~これはやられた。リックの言葉が頭の中で蘇る。
『人間を愛したっていいじゃないか。見送るのもそう悪くはないぞ』
嫌、俺はあの信長がこの世を去っただけで、ここまで気持ちを持ち直すのにどれだけかかったと思ってるんだ。それがもし自分が愛した者ならなおさらだ。立ち直るのにまた何百年かかるだろう。だが、俺自身の気持ちは押さえられないようだ。困った。
その日の仕事は最悪だった。検査の指示ミス、処方ミス、どちらもナースから指摘されて助けてもらった。優秀なナースだ。
「マルクス先生、今日は変ですよ。こんなボンミスいつもなら無いのに。先生今日は帰った方がいいです!」
「だが、診察が‥‥‥」
「では、先生は今日ヘルプだけにしてもらいます。いいですね! ここに座っていてくださいよ!」
と、診察室から出て行くナースに言われて少しへこむ。本当に優秀だな。というかミスを避ける為かも知れん。いかん、メンタルが可笑しいぞ。ここはナースの言う通り大人しくしていよう。そうしていたら外来診療時間は終わりその後は病棟の外国人患者の元に行く。そこでも色々やらかして病棟ナースに叱られてしまった。