デザイナーライザ
「さあユキはこっちに来て! 色々準備があるんだから。マルクはまた後でね」
とユキを連れて行く。何故ユキなんだ? お世辞にもモデル体型ではないぞ。長い年月ヴァンパイアも人間と同じ様に身長も伸びさほど違和感はないが‥‥‥ユキは平均的な日本人女性だ。今は髪を染め瞳の色も違うが‥‥‥ライザの目的が分からない。そこで、和也もライザの眷属に呼ばれて行った。と、いう事は和也もモデルデビューか? それも悪くない。で? 俺は一人なんだが‥‥‥。
ショーが始まったらしく会場からは大きな音楽が聞こえてくる。そこへライザの眷属がモニターを見せてくれた。盛り上がっている会場に和也だろう人物が登場する。‥‥‥か、和也? メイクにスタイリストのお陰で全くの別人になっていた。おおー変わるもんだなあ。そこで今度は俺が呼ばれる。そこにはライザが居た。
「マルク。最後は貴方がユキと一緒にステージを歩くのよ。あのランウェイはバージンロードになるの。私の演出よ」
と、そこにはウエディングドレス姿のユキが居た。ふんだんに使ったレースにジルコニアが縫われいてライトでキラキラ光っている。見惚れている間に俺はタキシードを着させられていた。
ステージ音楽が変わり。一旦照明が落とされる。再び照明が点灯した時ランウェイには真っ赤な絨毯が敷き詰められていた。スポットライトを当てられた俺達はそのライザの演出であるバージンロードとなったランウェイを二人で歩く。会場内は溜息で溢れる。曲はこの為だけに作られたものらしくその事でも会場内では盛り上がっていた。ゆっくり歩くようにライザに言われている。ユキと腕を組み一歩ずつ歩く。カメラのフラッシュが気にならない程照明は明るくユキの姿は美しい。
ライザからランウェイの先についたらユキの顔のベールを開けるように言われていたのでベールを挙げる‥‥‥ユキ‥‥‥なんて美しいんだ。思わずキスをしてしまった。軽いフレンチキスだが会場内は溜息で一杯になっていた。ステージ裏ではライザがガッツポーズをする。
『これで、ウエディングドレスの注文は殺到ね。今回も大成功だわ! この感情の高鳴りが私の幸せに導いてくれる。マルクも来てくれたのだから私も出ちゃおうかしら!』
そこで一旦照明が消えアナウンスが流れる。
「ここでライザより皆様にご挨拶がしたいと申しています。報道を許されているカメラマン以外撮影は遠慮して下さい。見付け次第会場から退場して頂き今後一切ショーへの出入りを禁じさせて頂きます」
照明のスポットが一点に当たる。そこに黒のマーメイドドレスに黒の帽子と黒のベールで顔を隠したライザが新郎役の俺マルクスの手に引かれてランウェイを歩く。謎に包まれたデザイナーライザが姿を現した! 会場はスゴイ事になっていた。カメラのフラッシュがスゴイ! 近くでライザを撮影しようとランウェイに集まる取材陣。そこはライザの眷属にしっかり阻まれる。
「ライザ‥‥‥おまえこんなにスゴイ注目されていたんだな‥‥‥カメラマン達みんな必死だぞ‥‥‥」
「貴方達が来てくれたのだもの、今日はサービスよ。でも、もう人前には出ないわ。だって私は裏方のデザイナーよ。主役はデザインされた洋服なのだから」
そう言って会場の人間達に向かってゆっくりと優雅にお辞儀をした後、ゆっくりバックステージへ俺と戻って行く。その後、複数のファッション誌にはライザの特集が組まれる程大騒ぎになる事になる。




