ユキ。初めて人間を吸血する
ライザからの連絡は来ていない。一体なんの用事だったのか気になる。それより結局今から和也の餌場に行く事になってしまった‥‥‥。
「マルクス様。大丈夫ですよ。新しく餌場は変えたので、ユキ様も安心してくれるでしょう」
そう言えば餌場を広げようとしてハンターにバレたって言っていたっけ。そう言ってあのネオン街より少し離れた場所のマンションに入って行く。
「この部屋です。どうぞ入って下さい。ユキ様。怖くないですよ」
俺の腕をしっかり掴んでいるユキに和也が言う。そこにはまだ若い女性が数人いた。
「あら? 今日は和也だけじゃないのね。そのお嬢さんも私達と同じなのかしら」
ほう、意識がはっきりしている。まだ、そこまで中毒になっていないのか。
「ねえ。そこのイケメンさんヴァンパイアでしょう? 匂いが違う。これは?‥‥‥」
和也が
「君達は知らなくていい。さあご褒美の時間だよ。さあ、誰からにしようか」
そこにさっきの女性がユキの傍に来る。
「貴方もヴァンパイア? なら、私貴方に血を吸われたいわ」
そう言って髪をかき分ける。その白い首筋にユキは、思わずはっとする。自分の中のヴァンパイアの血に驚いている様に見える。
「さあ。その牙をここに刺して‥‥‥私に快楽を頂戴」
ユキは女性に近づく。そして、自分から吸血した。人間を初めて吸血したユキ。ユキに吸血され女性も満足している。甘い吐息が漏れる。が‥‥‥ユキはすぐ離れてしまう。
「どうした?」
俺はユキに聞く。
「輸血パックより美味しいと思うけど‥‥‥マルクの血の方が美味しい。どうしましょう‥‥‥」
和也はにっこりと微笑むと
「始祖様の血は純血種ですから、美味しいのは当たり前です。ここにいる人間の血が普通なのですよ、ユキ様も慣れていきましょう」
「‥‥‥そうなのね‥‥‥」
「はい!」
そこで他の女性も寄ってくる。
「ねえ! 私も噛んで!」
ユキはその女性の血も飲んだ。せっかく俺も来たのだ。貰うかな。とすり寄ってくる女性の首に牙を立てる。和也は結構飲んでいた。
女性達も満足しているようで表情は恍惚としていた。俺はパンと手を叩きその場に居た人間の記憶を消す。
「帰ろう。ユキ」
ユキの反応は明らかに可笑しい。ヴァンパイアが人間の血を飲んで興奮する事は良くある。が、ユキは至って冷静だ。何だこの違和感は‥‥‥。親父の言葉が浮かぶ『ちょっと気になるが、そのうち何か分かるかもな』和也も満足した様子で帰って行く。
「では、マルクス様。また」
と会釈して行く。




