和也の餌場
仕事を終えて家に帰るとユキと和也が出迎える。
「お帰りなさい!」
「ええーっと。ユキがいるのは分かるのだが‥‥‥和也‥‥‥何故ここに居る?」
「主をお迎えするのに理由が必要ですか?」
「お前は日本のヴァンパイアのリーダーだろう? やる事はあるだろう」
俺はそこで輸血パックを見つける。
「どうしたんだ? そんなに沢山。俺は嬉しいが」
和也が首を振る。
「ユキ様がどうしても飲んで下さらないのです。困っていまして‥‥‥」
「どうしたユキ。ホテルの時は美味しいって飲んでいただろう」
「だってこれって血液にビニールの匂いがするから気持ち悪くなるの」
「これでも新鮮な血液ですよ。献血車で回ってもらって来たのですから」
和也がそれを渡す。俺は美味しく頂いたが、ユキは困っていた。
「このままではまた枯渇して辛くなるぞ」
そうユキに話すが‥‥‥
「だって‥‥‥」
「わかったよ。俺の血を飲め。それなら問題はないだろう?」
と腕を差し出すと和也がそれを避ける。
「主の血液を頂くなど! 眷属はその血を捧げますが逆は!」
「和也。いいんだよ。ユキ、本当は喉が渇いているんだろう? 辛いよな、ほら、俺の血を飲めよ」
ユキは俺の血を美味しそうに飲む。和也は羨ましそうにそれを見ている。‥‥‥。
「まったく‥‥‥ほら、和也お前にもやるよ。いつも世話になっているからな」
そう言って反対側の腕を出す。
「マルクス様。簡単に始祖の血液を渡してはいけません!」
ちょっと怒っている和也に
「俺にことわりもなく勝手に俺の血を飲んだのは誰だ?」
「‥‥‥それは‥‥‥眷属の血がそうさせたのですよ」
少し焦っている。
「悪かった。困らせるつもりはないよ。和也に力がついたらそれはそれで嬉しいよ」
「そう言えばライザ様から連絡が来ていませんか?」
ライザ?
「いや。俺には何も連絡はないが、和也の所にあったのか?」
「そうですね」
と笑う和也は‥‥‥少し不気味だ。
俺の血を飲んで満足したのかユキが腕を離す。
「マルク。‥‥‥ごめんなさい」
としょげる。
「いいよ。謝る事はない。和也に貧血気味の薄い血を用意させよう。出来るな?」
「勿論です。どうですか? あの場所にユキ様をお連れしましょうか?」
にっと笑って言う。
「‥‥‥ああ。あそこな‥‥‥」
どうするかな。悩むなあ。吸血する事に対してのいい練習にはなるか。
ユキがこっちを見る。
「和也の餌場って言っていいのか、吸血される事を喜ぶ人間がいる場所があるんだ。言っただろう、吸血される気持ち良さを知ってしまうのは麻薬のように危険な物なんだよ」




