日本へ
俺は部屋でユキたちを待った。オペは角膜に少し切れ目を入れるだけだ、そこからレンズを入れる。簡単だ。レーシックより安全だ。リックの腕も多分世界一だろう。なんせ、件数が桁外れにスゴイからなあ。眼科では名医とされている。おっと終わったようだ。ドアを開けてユキが入ってくる。
「スゴイのね。何にも感じないの。それに前より良く見えるわ」
嬉しそうに話すユキに
「何処からみても柏木有紀には見えないな」
鏡を持ってユキにその顔を見せる。
「わー! ほんとにスゴイ! 違う人だわ」
マジマジと鏡を見て言う。そんな姿に和也は
「髪は定期的に染めて下さいね。その瞳の色も素敵ですよ。よくお似合いです」
「ねえ。瞳の色ってこんなに簡単に変えれるものなの?」
不思議そうに俺を見る。
「俺達はヴァンパイアだ。回復能力は高いからな。それに、色を変える位簡単だよ」
「へえ、そうなんだ!」
そこにリックが入って来た。
「どうよ! なかなか良い感じだろう?」
「流石は名高い名医だ」
そう言う俺にドヤ顔で答える。
「で? これからは日本に住むんだよな。俺はまた国境なき医師団に戻るよ。マルク。また、講義をバンバンやってくれよ。支援物資は本当に助かるんだ」
「任せろよ。各国でやってくるよ。それに俺の講義に賛同してくれて定期的に送ってくれる所もあるんだ」
「お前は人間の中でも上手くやっている。心配はしてない。だが、タイラーの事が気になる。このままであのおっさんが納得するとは思えないんだよなあ」
と、ホテルの窓から外を見て言う。
「薬の呪縛から解かれたハンター逹や信者にあのおっさん、きっと力を使って服従させるだろうな」
「‥‥‥そうだろうか‥‥‥」
「お前の気持ちは分かるよ。だが、俺の勘は当たるんだよ。気をつけろよ。明日日本にいくんだろう? またな。マルク。いつでも連絡してくれ」
「リックには本当に感謝している。リックが日本行きを押してくれなかったら、ユキとも逢う事はなかっただろうしね。それにオタク生活が楽し過ぎだー!」
「そうか! 良かった良かった!」
互いに向き合い笑う。
♢♢
翌日、日本に帰って来て病院長に挨拶に行く。有紀の事については皆知っていて俺を慰めてくれた。ちょっと後ろめたい気はするが、柏木有紀は亡くなった。葬儀は盛大に行われたようだ。当然有紀のクリニックはなくなり職員だった事務やナースは柏木グループの病院へ配属となっていた。




