族長
「こんな薬なんぞ作って。こんなものを使わないとお前についてくる者は居なかったのか? 眷属ももう作っていないようだな。お前は今、一人なのだろう。そんなに自分の眷属も信用できなくなってしまっていたのか‥‥‥哀れよの」
親父は悲しそうに伯父を見る。ハンター達は灰になってしまった薬でも奪い合っていた。もうこうなると哀れとしか思えない。
「その様子ではお前もその薬を使っていたのだな‥‥‥長い時の中我々は生きて行かねばならん。そこに、其々が何かしらに意味を見出しその生を生きる。そして我等はそれをそっと守ってやらないといかん。この世で不死である存在はヴァンパイアのみだ。お前が王になりたくばそうすればいい。‥‥‥辺境の国に行って助けてやるんだな、そうすればお前は簡単に王になれる。それで、お前は満足か?」
「そんなモノで満足などするものか! このままでは終わらせない。きっとお前達に復讐してやる」
そう言って教会からよろよろ出て行く。それを支えるように側にいる者がいた。‥‥‥そうか眷属か、だが奴も長くはないだろう。親父が悲しそうに見ていたから何となくわかる。
「息子達よ。久しいのう」
振り返って親父は満面の笑顔で俺達に言う。
マイキーは
「まったく連絡の一つくらい寄越せよな。親父なら使い魔はいるはずだろう? 眷属だって沢山いるし」
「そんなモノをつかったらタイラーにバレてしまうだろう? それでは計画が進められないからな」
「計画って?」
俺達は聞いた。
「薬を栽培している土地に違う物を植えてそれで生産者に設けさせてきた。それも少しずつやって行かないとバレては困るからな。そこに時間がかかった。最後は薬の生産工場を潰してきたよ。もう薬はない」
キャメルがクンクンと親父の匂いを嗅ぐ。
「ふーん。薬はない。ねえ。でもこの匂いってあの薬に似ているわよ」
親父の懐から小さな箱が出てきた。
「これは、治療薬だ。まだ治験もしていない新しい物だ。これで世界は変わるぞ。楽しみだな! マルクには興味あるだろうから後から教えてやる」
俺の隣にいるユキを親父が見る。
「お前はマルクの眷属か‥‥‥ほう、珍しい血を持っているのだな」
ユキは手を胸に当て会釈をして
「はい。マルクス様の眷属にさせて頂きました。ユキと言います。新参者ですが、宜しくお願いします」
「良い目をしている! マルクを頼んだよ」
「親父。ユキも俺と同じドクターなんだ。その薬の事は後から一緒に聞かせてもらってもいいか?」
「構わんぞ。専門用語が理解出来れば問題ない。他の我が息子達には関心はないようだからな」
そう言って豪快に笑う。そして俺の顔を見て言う。
「マルクス。お前が次の族長になれ」
「!」
「はあ? 俺は末っ子だぞ、そこはマイキーに譲る所だろうが」
ふと周りの兄達の視線が柔らかい事に気づく。親父は言う。
「お前は他の種族とも交流があって信頼関係が出来ている。お前が一番向いている」




