妹。マリー
「話にならんな。‥‥‥どうしてこんなになってしまった‥‥‥タイラーよ」
親父の顔は本当に悲しそうだ。その間に俺達の傷は治っていた。険しい顔の伯父は
「俺の可愛いマリーをお前なんぞに!‥‥‥」
悔しそうに言う。親父は
「おまえのシスコンは知っていたがここまでとはなあ。確かに純血種を守る為に近親婚もあったが、今はそんな時代ではない。何より俺達は愛し合っていたんだ。そんな事よりそんな大切なマリーを何故殺した。憎いのは俺だろうが」
「お前達が愛し合っていたのは知っていた。お前を殺したらマリーはお前の後を追ってしまう‥‥‥それならいっそ‥‥‥苦しみ悲しむお前の顔を見ていた方が楽しかろうと思ったんだよ」
その表情は狂気じみていた。
「‥‥‥ヴァンパイアも心は壊れるのか‥‥‥そうなったら終わりだな。覚悟を決めろ! タイラー!」
親父とタイラー伯父さん二人が闘う。‥‥‥この教会の建物は大丈夫か? 始祖同士の戦いだ、ただでは済まないだろう。他に巻き込まれないように人間達には工事の為ミサは中止と張り紙を張る。これなら騒音も怪しまれない‥‥‥と思うが。それにしても特撮映画かって位に激しい。
「流石だわ。お父様は、見てタイラーって言ったかしら、伯父様は体力が残り少ないわよ」
ユキがそう言って二人を見る。俺はこの原因となった伯父のシスコンがちょっと腑に落ちないでいた。それで人間全滅させて自分の国を作るだなんて‥‥‥何故そういう発想になるんだ?
「ふうー‼ マリーが愛しただけはあるな。強いじゃないか‥‥‥」
二人は手を握り押し合いになっていた。
「まあなあ。そこに惚れたんだろうさ!」
「その口を閉じろ!」
明らかに伯父さんの方が劣勢だ。もの凄い汗をかいている。そして動きがあった。親父が伯父を組み敷く。
「もう‥‥‥終わりにしよう。‥‥‥マリーはいないんだ!」
その後床に倒れる伯父。床に臥せてぶつぶつと何かを言っている。そこへこんなに居たのかという位にハンター逹が襲って来た。
「さあ! お前達! 悪魔を倒せ! その後に薬をやるぞ! 誰が一番だ?」
そう言ってポケットの中を探す。
「薬ってこれかしら?」
とライザが白い粉の入った袋をプラプラさせて言う。
「‥‥‥貴様いつの間に‥‥‥」
「だって痛かったのよ。伯父様に蹴られて、それにこの匂い! 私嫌いなの!」
そう言ってその袋ごと燃やしてしまった。
「‥‥‥! な、なんて事を!」
灰になった薬にハンターが群がる。




