伯父
「タイラー伯父さん。妹であるマリーを何故‥‥‥殺すなど‥‥‥そんな酷い事をさせたのですか!」
「族長は私達アナリス家が代々継いで来たんだ。それを、ロメオの奴がマリーと結婚した事でマリーに盲信していた始祖や眷属が‥‥‥ロメオについて行ってしまった‥‥‥。実際マリーはよくやってくれていたよ。ここまでヴァンパイアが纏まった事はなかったよ。流石は族長の血を継いでいる事はあると感心したものだ。だがよく考えてみろよ。俺はアナリス家の長男だ。族長にふさわしいのは当然俺ではないか、そう思っていたよ。だが、親父はマリーの夫であるロメオを指名した。‥‥‥怒りで気が狂いそうになったよ」
あの優しかった伯父の顔はそこにはなかった。
「マリーが居なくなれば長は俺のものになるのだと思っていた。‥‥‥だが思うようにならんなあ。ロメオはマリーが居なくなって今では何処にいるかさえ解らない。そんな者が長だと! 笑わせるわ!」
俺達は怒りと悲しみの中、ユキが突然話し始める。
「貴方は自分の肩書きがそんなに大事? 族長って事は自分の仲間を助け纏める事が出来る者を指すのよ。貴方は自分の事しか考えていない! マリーの父親の判断は間違いではなかったって事よ!」
すごい形相でユキが言う。
「小娘になどわかるものか!」
「わかるわよ! そんな大事な事が貴方には解っていなかったから、だから、父親から指名されなかったのではなくって?」
伯父がヨロケル。
「知った口を聞くでないわー!」
風の刃を飛ばしユキに攻撃を仕掛けて来た。俺はそれをユキとかわす。
「ほう。あのちびが成長したもんだ」
「俺が知っている叔父はここには居ない。ここには権力を手にしようとしている愚かな人物だ。それも、人間をこの世界から消してしまおうと思っている。新しい神にでもなるつもりか!」
「マルク。しばらく見ないうちに生意気な口を利くようになったなあー!」
気持ちの悪い高笑いを上げる。
兄達は伯父に攻撃を当てるが一向に効果がない。皆蹴とばされて壁にぶつかる。「つっ!」「くそ!」「もう酷いわ!」
俺はどうしても一発殴りたくて仕方なかった、だって俺は叔父の事は本当に好きだったんだ、それを‥‥‥妹のマリーを殺す指示を出すだなんて‥‥‥どうしても許せない!
「俺は伯父さんの事が本当に大好きだったんだ! だが! 俺から母を奪った! その事は絶対に許さない! その理由も理解出来ん! 母マリーは肩書など兄に譲ると父と話していた事があったんだ。あの時は俺は子供で理解出来ていなかったが、今なら分かるが! そうしないでくれて良かったと今は思うよ」




