伯父。タイラー・アナリス
「そうなんだ!」
と、驚く。
「ユキ。明日、いやもう今日か‥‥‥これからが本番だ。これから教会の裏にいる相手に逢いに行く」
「‥‥‥今日‥‥‥マルク。とても辛そうな顔をしている‥‥‥その人が誰か分っているのね」
「確実な証拠はない。相手の行動や望みも解らない‥‥‥だが、俺の勘は当たっているだろう。その相手に会って話を聞く!」
ユキが俺の腕をしっかりと掴む。
「君を危険な目には遭わせない!」
俺はユキを硬く抱きしめて言う。
「夜が明けるまでもう少しある。朝焼けもここからの眺めもいいんだよ。もう少ししたら一緒に見よう。それまでもう少しベッドで休もう」
ベッドに潜り二人でじゃれ合った。幸せな時間だ。
空が明るくなって来た。俺達はベッドから出て窓際の椅子に座る。
「本当にきれい」
俺の肩にもたれて言うユキ。
「この美しい景色を俺達は守らないといけない。オーバーな言い方に聞えるも知れないが‥‥‥それ程の事なんだ」
俺達は着替えを終えて兄弟の待つ部屋に集まる。そこにはもうすでに兄達は居た。マイキーが言う。
「決着をつける。分っていると思うが、これは俺達家族の問題でもある。なので、他の家系の始祖にもそれなりに話してはある。全員に理解を求める事は出来なかったが、理解してくれた始祖逹は多かったよ」
とマイキーが話す。
「リックの所は大丈夫だぞ。頑張れって言われたよ」
にっこり笑って話す。
「さあ! 行くぞ!」
俺達と数名の眷属がホテルを出る。ある場所に向かう。『サン・ドメニコ教会』シチリアバロック教会としては地味といえる。ここは、ローマの通りに面している。‥‥‥ローマ。本当は許可なくここには来られない。だが、ここにアイツがいる。
まだ朝早い為か人は居ない。俺達はその教会へ入る。
「まだ、ミサには早いですよ」
と神父が声を掛ける。
「この奥にいる人物に用があって来た。向こうも解っていると思うが?」
マイキーが神父に向かって話す。すると速足で奥に向かって進んで行く。
「マイキー。ここで待つか?」
「そうだな。あっちからお呼びが来るさ」
しばらく経って神父がやって来た。さっきとは違う神父なのは分かる。
「よくここにいるのが分かったな。ここは地味だからな」
そう言って笑う。俺はその顔を見て‥‥‥俺は、
「残念だよ。タイラー伯父さん‥‥‥貴方の顔をここで見る事になるなんて‥‥‥」
「お前達とは、本当に久しぶりだな。マリーの事件以来か」
薄っすらと笑みを浮かべて話す。




