ウェンベリン兄弟
ハンターめ。こんな街中でやってくれるな。マフィアが黙ってないぞ。タクシーはスピードを上げ道路を走る。何とかホテルに着いた。
「悪かったな。車を壊して」
幸い窓ガラスが割れただけで他は大丈夫みたいだ。そう言って余分に金を渡す。それをそっと俺に返す運転手。
「大丈夫ですよ。代わりはありますから。それよりお気を付けて!」
「ああ! お前もな!」
とタクシー運転手と別れる。
ハンターは逃げたか‥‥‥。気配がしない。
「和也。ホテルの前に眷属を置く。多分キャメルやライザの眷属がいるはずだ」
「‥‥‥マルクス様、お忘れですか? ここはマイキー様の眷属がオーナーですよ」
そうだった‥‥‥。
「大丈夫ですよ。私達の部屋には一般の客など他の者は入れません。さあ。参りましょう。お兄様方がお待ちです」
そう言って俺達の前を歩く和也。まるでこのホテルの中を知っているようだ。
「はい! このホテルの構造まで知っていますよ。何処に何があるかまでもね」
笑顔の和也‥‥‥事前調査をしていたか‥‥‥。
「マルクス様。ウェンベリン家に関して私の知らない事は有りませんよ」
「そうか。頼もしいな」
「‥‥‥それなら、タイラー・アナリスの事も知っているんだよな」
「もちろんです。私はマリー様の眷属ですよ。それこそ知らない訳はないでしょう。よーく知っていますよ」
その話す語尾の口調のトーンが低くなる。和也も気づいているのか‥‥‥ユキは俺の腕に掴まる。何枚もの扉を開けてその一室にたどり着く。ドアを開けると兄達は揃っていた。
「どうだ? イタリア見物は。それよりさっき銃声が聞こえたが狙われたのか?」
「そうだね。狙われたよ。そのハンターに同情するよ。マフィアに目を付けられたかも知れん。気配が消えた」
「まあ。自業自得だ。縄張りに勝手に入ってきたんだ。ボスが許さんだろうな。ははは! 俺の眷属だが奴等は知るまい」
皆でソファーに座る。マイキーが両肘を突いて顎を乗せる。
「マルク。お前の言った通りだよ。教会に潜入しているウルフマンから連絡が入った」
「教祖の顔は誰も見た事がないと言われているが‥‥‥」
俺はマイキー兄の顔を見る。
「アイツがそう簡単に顔を見せるかよ」
マイキーが言う。
「ウルフマンの話では教祖は多分明日にでもこっちに来るようだ」
「そうか。明日は礼拝がある。その時薬を渡すんだろう」
ライザが
「あの薬の匂い本当は嫌いなのよね。甘ったるくてさ。それを吸った人間の血って美味しくないの」
それを聞いたキャメルが笑う。
「お前あんだけ飲んだろうが?」
「好みはあるのよ。そうねえ。ユキって言ったかしら? 貴方の血はきっと美味しいでしょうね」
むっと俺が睨む。
「もう。マルクったら冗談よ」
「ライザが言うと冗談に聞こえない」
「だから、人様のものを勝手に摂ったりしないわ」
そう言ってユキに笑いかける。




