教会
イタリア。トレビの泉やコロッセオ。宮殿や寺院、観るべき建物は多い。あのピサの斜塔も有名だ。特に‥‥‥大聖堂と言われる教会は多い。観光スポットも多く人間達で賑わっている。なのでユキはとても嬉しそうだ。
「わあー! 綺麗ねえ! 歴史を感じる建物は多いわね!」
「まっ、古い建物は多いよな。日本みたいに大きな地震がしょっちゅう起きる所ではないから、保存状態は良い」
歩きながらユキは周りを見て楽しんでいる。
「ジブルのアニメもイタリアが舞台のものもあったわね」
「ジブルアニメ‥‥‥いいねえ。紅のブタや魔女の宅配便、天空の城ラピタ! どれも名作だ」
ここの建物がモデルって聞いた事があるなあ。帰ったらまた見たい! と一人妄想していると、
「ねえ! ここからバチカンって遠いの?」
「あっ‥‥‥ユキ。あそこは一つの国だよ。俺達ヴァンパイアはあそこには入れない。昔に我々はあの国と条約を交わしている。ローマにも行けないんだ」
「‥‥‥そうなんだ」
寂しそうに言う。
「だが、その事を知っている者は、ほんのごく一部の人間だけだよ。だから、意外に俺達ヴァンパイアが入っても気が付かれないんだ」
笑顔でそう言ってみる。
「約束しているのだから‥‥‥ダメよね」
「そうだな。だからここイタリアにはあまり来ないよ。教会は俺達を悪魔だと思っているからね」
そう言って背伸びをする。
「それよりお腹空かないか? 屋台料理が旨いんだ。食べないか?」
「屋台! いいわね!」
途端に笑顔になるユキ。そうだ。その笑顔が一番君には似合う。俺達は屋台巡りをして食べ物を味わう。
「そろそろホテルに戻った方が良いかと思います」
和也が言う。確かにずっとハンターの視線を感じる。この場は離れた方が良さそうだ。
「では、こちらのタクシーにお乗り下さい」
と、和也がさっと車のドアを開ける。運転手は同族か‥‥‥。物凄い笑顔で俺を見ると手を胸に当て会釈をする。
「こんな所で‥‥‥始祖様にお逢い出来るなんて光栄です!」
と声を震わせて言う。
「よっぽどの事がないと俺達はここに来ないからな。気持ちは分かるが、しっかり運転を頼むよ。ハンターが狙っている。お前もこの後気を付けろよ」
「分かりました。無事ホテルまで送らせて頂きますよ!」
俺達は後部座席でユキを挟んで三人で座る。少し狭いがユキの体温を感じて俺は嬉しい。和也がユキを俺の方へ押してくる。
「マルクス様。ユキ様を」
その時銃声が聞こえた。車の窓が割れる。
「きゃー!」
ユキが悲鳴を挙げる。ハンターに狙われた! こんな街中で何を考えている!




