ヴァンパイア
「ユキ‥‥‥人間としての有紀は死んだ。君の両親に本当の事は言えない。それでいいんだよな? 眷属は主と主従関係を持つ。だが俺はユキ。君とは対等でありたい」
「言ったでしょう? 私は貴方のモノよ。いつも貴方の傍にいるわ」
和也は
「同じマルクス様の眷属となってもユキ様はマルクス様の大切な方である事には変わりませんよ」
ユキは嬉しそうだ。
「でも、どうやって偽装するの? それに両親が私の死を知ったらこの国へ資金の援助は途絶えてしまう可能性があるわ。それは、嫌だわ」
そこで和也がレコーダーを出す。
「ここに有紀様の声で遺言という事でご両親に当てて言葉を録音して下さい。もうお会いする事は出来ません。ですので」
ユキはマイクを手に覚悟を決めて話す。
「パパ。ママ。ごめんなさい。これを聞いているって事は私はこの世に居なくなったって事ね。私はここに来て後悔はしていない。危険を承知でこの国に来たのだもの、きっと悲しんでいるよね‥‥‥私は医師としてこの仕事に誇りを持っている、ここに来て沢山生活に困っている人と会ったわ。お願い。この国の援助は続けて欲しいの。‥‥‥これまで育ててくれてありがとう!」
マイクを止める。
「それでいいのか? もっと言いたい事はあるんじゃないか?」
俺はそう言った。
「これでいいの。きっとパパやママも解ってくれる。だって二人もドクターだもん!」
笑顔でそういうユキ。その笑顔が俺の心を締め付ける。和也は
「それでは、遺体の偽装をします。ユキ様手伝って頂けますか? 指紋、網膜、歯型などコピーを取らせて頂きます。眼球を取り出します。痛みはすぐに治りますので少し我慢して下さい」
そう言ってユキの片方の眼球を取り出す。そして、どこから持って来たのか見知らぬ遺体にその眼球をはめ込む。
「!‥‥‥えっ? もう痛くないし見える!」
驚くユキ。
「ヴァンパイアの回復能力は優れています。どの種族より長けているかと」
和也が説明をする。その驚いた姿が新鮮で可愛いと思うのは俺だけかな。それから指紋、歯型のコピーをとって遺体に移す。
「ご両親には騙す形になってしまいましたが、私達は人間とは違う者になったのです。その姿もこれからも変わらないままですよ」
ユキが鏡を見て何かやっている?
「本当だ! 牙がある!」
そこですか‥‥‥。俺の時もそうだったっけ。不思議そうに見てたな。
「もしかして、私、マルクの血を飲んだのよね‥‥‥覚えていないわ」
何故か残念そうに言う。
「まあな。あの時は無意識だっただろうからな。ユキ、お前、俺の腕を折る程噛んだんだぞ」
と自分の腕を摩って話す。
「‥‥‥これからも‥‥‥私、そんな酷い事をするの?」
「それは無いよ。始めだけだ。これからは、俺がユキにしたように牙を動脈に沈めて吸血する事で血を飲む事が出来る」
「‥‥‥そうなんだ‥‥‥」
ちょっと困った顔をするユキ。




