動き出した影
翌日。朝礼の時、軍人の数が明らかに減っている。指揮官は
「軍人の人数を確認しろ! 直ぐにだ!」
隊員は数えるが、人数が合わない事に指揮官は焦る。
『居なくなった者は教会から送り込んだハンター逹だぞ。どうなっている!』隊員から報告を受けるとやっぱり足りない。‥‥‥多国籍軍に国連軍の応援まで来ているんだぞ。これでは我々に不利ではないか! 教会の奴等は何を考えている! 化け物から俺達を守ってくれるんじゃないのか! 明らかにイラついている指揮官に動揺する兵士達。
「戦闘は休戦中のままですが‥‥‥これでは数が‥‥‥どうしますか? 兵を集めないと‥‥‥あちらは国連軍を連れて来ていますし‥‥‥」
兵士も動揺している。
「わかっている! 何とか他に連絡をとって兵を集める、待っていろ」
そう言って会議室らしい場所へと入って行く。その机に置いてある電話で何処かへ連絡をする。
「‥‥‥これはどういう事なのか説明してくれ! このままでは我々が不利な状況だ。そっちから送られたハンターも居なくなった! これでは話が違うではないか!」
机を叩き怒鳴る。電話の向こうでは小さく笑い声が聞える。
「‥‥‥そうか‥‥‥あの一族が集まったようだな。きっと全員いるんだろう。ハンターも使いようだ。これでアイツらが揃ったとわかった。今度は今までのようなハンターではなく、化け物専門のハンターをそっちへ向かわせよう」
「わかった。頼むぞ。戦争は今休戦しているが、これでは人口は減らせないぞ! もっと範囲を広げ大規模なテロを同時にしないと!」
「そうだな。では各国でテロ攻撃を始めるとしよう。国連なんて無視すればいい。こっちには教会という大きな組織があるんだ。国連軍など人質を大勢抱えていては動けまい。今の国民全員が人質だ! 休戦の条約など破棄してしまえ! 国など滅びてしまえばいい! 残った我々がその国の指導者になるのだ!」
電話を切った後、男は大きな声でひとしきり笑う。そして、傍にいる兵士に向かって言う。
「戦闘開始だ! 国民など気にする事はない、市街地にも攻撃して構わない! ミサイルも弾丸も送られてくる。準備を始めろ!」
それを聞いた兵士はさっと敬礼をして部屋を出る。『これはまずいな。多くの犠牲者が出る。伝えなければ』兵士はもう一人の兵士に
「悪いがトイレに行ってくるよ。先に行ってくれ」
そう言って、そのまま森の奥へと消えて行く。その中、誰も彼が居なくなった事に気づく者はいない。




