有紀との再会にて
ライザが去った後はライザの眷属が遺体を処分する。
「次は、あのハンターね」
と鼻をくんくんとさせて匂いを確認する。俺にはわからんが、ライザはハンターの匂いが分かるらしい。そうやってライザはハンターを食らいつくす。暗闇の中こっそりと。その様子を遠目からキャメルは見て言う。
「俺の出番は無いか。ライザは大食いだからな。今夜にでもハンターはアイツに食われるな」
そんな夜。シャワーから出て来た有紀が俺の後ろから抱き着く。
「有紀。そんなに閉めたら首が苦しいよ」
「んーだって! 嬉しいんだもん!」
「俺も嬉しいよ」
後から抱き着く有紀の腕を取ると、後ろから
「ここに来て本当に良かったと思っているの。今まで知らなかった事や見た事がない物ばかりで。貴重な体験をしているの。私。マルクと同じ体験が出来た事が嬉しいし、マルクの手際のいい処置に関心しているのよ。知ってる? 医療班の皆がマルクを褒めるのよ。素晴らしいドクターだって。それを聞いて私まで嬉しくなっちゃうの。それに地元の人達がドクターマルクスには感謝しかないって言っていたわ」
声を弾ませて言う。
「まあなあ。長い付き合いだから」
「そう言えば本当はどの位ここに居たの?」
「20年位かな。俺達は姿が変わらないから同じ所には長くは居られないんだ」
「どうして?」
「考えてもみろよ。年をとらないままでいるって不自然だろ。20年って言えば生まれた子供が成人するんだ。それなのにこのままって可笑しいって思われるのが普通だよ」
「そっか。だから色々な所の紛争地域に行っているのね。名前は変えていないのに誰も不思議に思ってないわね」
「それは、時間を空けてここに来るからな。その時の関係者はいない。ここに来る為に登録している国境なき医師団の事務方にも俺達の仲間がいるんだ。だから、どうにでもなる。俺はここが好きなんだ。何も考えず治療だけに専念する。俺の傷ついた心はそうやって長い時間のお陰で癒されたよ」
「‥‥‥ねえ。マルク、聞いてもいい? 貴方のお母さまって、亡くなったって事よね。不死で始祖なのに、どうして?」
「‥‥‥前にも言ったけど、俺達にも弱点はある。母も当然始祖で純血種だ。今日有紀を襲ったハンターと呼ばれる者に殺されたんだ。俺はハンターを寄越した教会で暴れた。狙われたのはその事に関係しているのか分からんが‥‥‥ハンターを使って俺達ヴァンパイアをせん滅させようとしているのは間違いない。他の仲間の何人かが犠牲に遭っている。和也もだ。あの時、銀製の弾丸が使用されていた。そんな小細工をするのは教会関係者だけだ」
‥‥‥有紀は黙って俺の話を聞いていた、そして
「可笑しいわね。私が狙われた時、和也くんが助けてくれたけど‥‥‥その時の相手が使っていた拳銃は普通の弾丸だったわ」
まさか‥‥‥おとり‥‥‥。




