表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/91

デート?

 そんな笑顔の有紀に胸が疼く。


「有紀‥‥‥柏木先生、今日仕事が終わったら食事でも行きませんか?」


「いいわよ。医局で待っているから連絡してね」


 そう言って戻って行く。俺もこれからカンファレンスだ、遅くなると他のドクター達の視線が痛いんだよな。さあ急ぐか。


 仕事も無事予定通りに終わったし、有紀に連絡をしよう。有紀も仕事は終わったようで駐車場で待ち合わせをした。車を見て有紀が驚く。


「これってどうしたの?」 


「友人からもらったんだ。日本にいたんだがもう国に帰るからお前にやるって」


「そうなんだ。買ったにしては早いなあと思ったけど、そういう事なのね」


「では、どうぞ姫」


「まあ! マルクってそんなジョークも言えるのね」


「俺は有紀から見てどうな風に見えているんだ?」


「出逢った時の印象がね、なかなか抜けないわ。だって迷子の子犬みたいだったから」


 そう言ってコロコロと笑う。ははは正直人間酔いはするわ、貧血でふらつくわで、頼りない、怪しい人物だっただろうからな。


「だから、ほっておけなかったの」

 そう言ってこちらを向く。俺は運転をしているから脇見はしてないぞ。だが、有紀が俺を優しく見つめているのが解る。


「知っている? 貴方あの病院でちょっとした有名人になっているのよ」


「何の事だか解らないのだが?」


「だって色々な国の言葉が話せる人なんてそうそういないし、イケメンだから余計に目立つのかしら?」


「嬉しいねえ。イケメンって言われるなんて。有紀の目にも俺はそう映っているのかな?」


‥‥‥答えが返って来ない。ちょっと心配になるが運転中だ、それにまだこの国の道路事情に馴れていない。左車線だとリックに聞いていたが‥‥‥脇見をする勇気はない。



 予約した店に着いた。

「着いたよ。ここだ」


 有紀が驚いてつい大きな声で

「ここって! 結構お高いお店じゃない!」


「有紀。声が大きい」


「‥‥‥っていっても私のこの恰好でいいのかしら?」


「うん。ジーンズじゃなければ大丈夫だよ。有紀のその服よく似合っていて素敵だよ」


「はあ~貴方の金銭感覚が解らないわ」

 溜息混じりに言う。


「だって女性を誘っておいてファミレスじゃあね」

 と爽やかに笑って見せた。


「私にそんな気を使わなくてもいいのよ。ファミレスだって構わないのだし」


「さあ、こんな所で立っているのも変だから中に入ろう」


 高そうなドアが開いて中に入る。空かさず店員が出迎える。


 マルクは店員に


「予約してあるのだが」


「マルクス・ウェベリン様ですね。ご用意出来ております。こちらへどうぞ」


 流石は有名店だ。客の名前をしっかり把握している。有紀が緊張しているのが解って何だか可愛いい。店員に案内されて個室にはいる。


「ここなら人の目は気にならないだろう? 寛いでよ。いつもの元気な君は何処に行ったのかな? 借りて来た猫になってるよ」


 俺だってあの時の弾けるような笑顔で、色々連れて行ってくれた時の君をハッキリと覚えているよ。俺はずっと笑顔で有紀を見ていた。


 料理が運ばれてくる。前菜からもう素晴らしく芸術品だ。リックが勧めるだけのお店だ。きっと満足させてくれるだろう。


「美味しい!」

 有紀が笑顔になった。


「やっと笑った」


「もう仕方ない! 今日はマルクに付き合うわ。この後も予定を決めているんでしょう?」


 その顔はいつもの弾けるような笑顔だった。


「まあね。あの時のお礼とでも思ってよ。ほんとに助かったんだよ。あんな所で倒れたら洒落にならないからね」


 暫く食事をしながら有紀の話を聞く。有紀の両親も医師で大きな病院を経営している。いずれ自分がその病院に戻らないと行けないのだと。


「だから、今は自由にさせて貰っているわ」

 美味しそうに食べながら話す。


「君はそれでいいの?」


 俺はきっと聞いては行けない事を聞いた。


「私に選択肢はないわ。マルクのように自由にいられる事は出来ないのよ」


 食事は終わった。


「有紀、次に行こう。付き合ってくれるんだろう」


 俺達は店を出た。車は運転代行者に頼んだ。歩きながら俺はさっきの有紀の話を思い出す。


「次はあそこのラウンジだよ」


「はあ~本当に貴方って変わっているわね。まあいいわ! 付き合ってあげる。行きましょう!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] デート? ではなく、ズバリデートですね。
[一言] 完全にデートですね( ˘ω˘ )
[一言] 紳士!医者でイケメンでこの対応なら、モテますね。もしや、女性の血液をいただくために、リサーチと努力をした結果…?ヴァンパイアも大変ですね。 有紀先生…血を飲まれてしまうの?(゜Д゜;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ