有紀の覚悟
有紀のテントにやって来た人物が自ら自爆した。和也は有紀を庇い地面に潜る。
俺達は丁度その場面に遭遇し唖然とする。
「有紀ーー!」
爆発のあった場所は有紀のテントがある場所だと言われていた所だ。俺はその現場に急いで行く。
嫌な予感しかないが、和也が黙ってそれを許すはずは無い。焼けたテントと焦げた匂い。暫くその場に佇む。するとそこで地面からもぞもぞと何かが動く。
「まったくレディーに対して失礼ですよ」
と和也が這い出て来る。その腕の中には有紀がいた。
「大丈夫ですか? 有紀様」
有紀は現状が掴めていない。まあ、いきなり爆発に巻き込まれたのだ。そういう反応は仕方ないか。だが、良く無事だったものだ。
「和也。お前こそ大丈夫なのか? まともに爆風をくらっただろう?」
「私の服はロケットを作る素材で作られている特殊な物です。ちょっと重いのですが防弾着より丈夫に出来ています」
とにっこり笑う。こういう事も想定していたという事か。和也、脱帽だよ。
「それより有紀様。耳は大丈夫ですか?」
「和也くんが塞いでくれていたから鼓膜は大丈夫よ。爆音って強烈ね。今でも耳鳴りがしているわ」
和也もそれなりに負傷していたが、傷もみるみる回復して行く。もうすっかりいつもの和也だ。
「良かった」
そう言って俺は有紀を抱きしめる。
「悪かった傍にいてやれなくて‥‥‥怖い思いをさせた」
「マルク」
有紀も俺を抱きしめて俺の名を呼ぶ。暫く互いの温もりを確認した後、有紀が俺を見て言う。
「本当にびっくりしたわ。驚く暇もなかったけど。今になって怖くなってきたわ」
「これで一人ハンターは居なくなった訳だが、どうするマルク。彼女と日本に帰った方がいい。ここは危険だ」
リックが俺達に言う。
「有紀。君は日本に帰れ。君を危険に巻き込みたくはない。大丈夫だ。日本に戻っても和也がいる。今回の様に有紀を危険から守ってくれるだろう」
「嫌よ!」
有紀の返事は即答だった。
「だが‥‥‥」
「嫌よ。私はマルクの傍に居たいの。折角会えたのに、帰れだなんて‥‥‥」
そう言って目を潤ませる。
「‥‥‥俺も有紀と一緒に居たいよ。俺はハンターと呼ばれる者に狙われている。その目的は俺を苦しめる事だろう。だから、有紀。君が今回の様にターゲットになる可能性はあるんだ」
「なら! 私を傍に置いて! マルクならそんな奴等やっつける事なんて簡単でしょう?」
「‥‥‥問題ない。だから直接俺を狙わないんだろう」
「それじゃあ。決まりね! だったらマルクの傍が一番安全って事だもの!」
有紀‥‥‥。そうかも知れない。逆にその方が俺は安心だ側で守ってやれる。
「では、滞在の準備をしましょう」
そう言って和也は出かける。本当に有能だよ。マリーはそんな和也を愛したのだろう。ここまで尽くされて嫌な奴などいない。俺が女だったら、ここまで尽くしてもらったら速攻落ちるよ。当然イケメンだしな。東洋人にしては掘りの深い顔に二重のスッキリとした眼差しで流し目をされたら大抵の女性は落とせるな。なんて考えてしまう。




