有紀危うし
俺とリックは医療班の元へと向かう。大丈夫だ。和也がいる。そう思っているが心臓が痛い。不安で今にも潰れそうだ。
その時、有紀はテントで休憩をとっていた。そこに同じドクターで医療班も同じ同僚だと名乗る人物が有紀のテントに声を掛ける。
「さっき来た支援物資にクッキーがあったんだ。良かったら一緒に紅茶でも飲みながら話さないか?」
そう言って有紀のテントを覗く。
「そう言えば、マルクが持って来たんだっけ?」
「そう言えば君はドクターマルクスとは仲が良いと聞いているが‥‥‥」
「そうね。私達はお付き合いしてるから」
その人物は強引にテントに入り有紀に向かって腕をとって、
「あんな奴より俺と付き合わないか? 君のドクターとしての姿勢に心を奪われたよ。アイツに君は相応しくない」
その言葉に有紀は怒る。
「貴方は本当に国境なき医師団のメンバーなの? ここでマルクを悪く言う人はいないわよ!」
そう言って入って来た人物を睨むように見る。
「君はアイツの正体を知らないんだね」
「‥‥‥なんの事かしら」
「アイツは‥‥‥」
と言いかけると有紀のテントに和也が慌てて入って来る。
「ドクター柏木! ここは危険です! すぐ近くで自爆テロが遭って数人怪我人が出ました! すぐにここから避難して下さい!」
突然入って来た和也に驚く人物は
「誰だ君は! 今は休戦中だ。そんな事はない!」
と、その人物が言う。有紀はその人物に
「休戦中? って。どういう事? 何故そんな事を貴方が知っているの? 私達はそう言う話は聞かされていない! 怪我人や病人を治療する。それが私達の目的でしょう?」
和也は有紀を庇う様にその人物との間に割って入る。
「お前は! 奴の眷属!‥‥‥」
そう言ってはっと口を塞ぐ。
「どうして貴方がここにいる和也くんを知っているの? 初めてのはずでしょう?」
焦ったその人物は和也に向かって発砲する。数発和也に当たる。有紀も焦る。
「大丈夫ですよ。こんな鉄の玉なんか」
そう言って有紀に振り返る。
「和也くん‥‥‥」
それでも有紀は心配そうに言う。発砲した相手を睨み言う。
「さて、貴方をどうしましょうか?」
和也がそう言って人物に詰め寄り追い込む。
「この化け物が! ここから出ていけ! そして居なくなればいい!」
そう叫びながら再び何度も発砲する。銃の玉はなくなりカチカチという音だけがする。
「もう玉切れのようですね。どうしますか?」
相手は有紀に
「君の事は本当に尊敬していたんだよ。残念だ」
そう言って自爆した。




