兄と有紀
これでウェンベリン家の兄弟が集まった。きっとハンターにも伝わっているだろう。移動する車の中でリックの言葉が浮かぶ“罠かも”だとしたら俺が真っ先に狙われるはずだ。実際和也が狙われた。俺を苦しめるのが目的だとしたら‥‥‥有紀が危ない! 早く顔を見ないと落ち着かない‥‥‥。
「大丈夫ですよ。マルクス様」
イラついている俺に、隣に座っている和也が俺にそっと言う。
「有紀様にも護衛は付けていますし、情報も入ってきます」
和也は自分の髪を耳にかけて俺にその耳に入っている物を見せる。それは知っているが、やはり気が逸る。こんなに有紀が俺にとって大切な存在になっているんだなあと改めて感じる。そんな俺をキャメル兄が嬉しそうに見る。
「ふーん。マルクをここまで落とした彼女がどんな人間か気になるな」
「とてもチャーミングな女性ですよ」
和也が言う。俺は顔を隠す。‥‥‥恥ずかしい‥‥‥。
「そうか! 楽しみだ!」
大きな声で笑う。まったくキャメル兄には敵わないよ。たぶん兄弟の中で一番本能に正直に生きていると言っていいだろう。眷属は一番多くいる。そんな話をしている間に目的地に着いた。直ぐにでも有紀の顔が見たい。だが、そこは順序がある。医療班の所に行って他のドクター達に挨拶をする。そこに有紀が俺達を見つけて走って来る。
「マルク!」
俺に抱き着く。
「早かったのね! もっと時間がかかると思っていたわ」
あの弾けるような笑顔は変わらない。現場で沢山辛い思いをしただろうに‥‥‥。
「まあ! 和也くんも一緒なのね!」
「有紀様。久しぶりですね。少し日焼けされましたか?」
「そうなのよ。日焼けって美容の大敵でしょう? 本当は気になっているんだけど。日本に帰ったら思いっきりお肌のケアに専念するわ」
「元気そうで安心したよ。有紀。俺の兄達が居るんだ。紹介させてくれないか、兄達も会いたがっているんだよ」
「そうなの? ここにいるって事は軍の関係者なの? それともドクター?」
「軍の関係者だよ」
車から降りて来る兄達。有紀の顔を見てライザが言う。
「お肌に優しい日焼け止めをあげるわ。折角の可愛い顔に日焼けはダメよ。忙しくてもちゃんとお手入れしないと」
不思議そうに有紀がするので、
「ライザだ。4人兄弟の3番目だよ。俺は末っ子だからね」
「お兄さん? とても綺麗な方なのですね。柏木有紀です。宜しくお願いします」
「まあ! 正直な子ね! 好きよ。そういう子」
ライザはご機嫌だ。
「隣の厳ついのはキャメルだ。2番目の兄だよ。多国籍軍に所属している。そしてもう1人は長男のマイキーだ。こっちはアメリカの国連軍にいる」
「宜しくお願いします!」
人懐っこい笑顔で挨拶をする有紀。




